相続手続き100チェックリスト No.93。非上場株式は、株主名簿・定款・税務資料から株数と種類を確定し、遺産分割前の権利行使、取得者確定後の名義書換、会社からの売渡請求、相続税評価を並行して進めます。法人版事業承継税制を検討する場合は、2027年9月30日の特例承継計画期限にも注意します。
No.93 非上場株式の確認事項
- 確認項目
- 確認内容
- 株数・種類
- 株主名簿・定款・株券・税務資料を照合
- 遺産分割前
- 権利行使者1人を定め会社へ通知
- 名義書換
- 取得者確定後、会社所定書類で請求
- 売渡請求
- 定款規定と会社が相続を知った日から1年を確認
- 価格申立て
- 会社の売渡請求日から20日以内
- 相続税申告
- 原則、相続開始を知った翌日から10か月
- 評価明細書
- 相続開始日が2026年4月1日前後か確認
- 特例承継計画
- 現行の提出期限は2027年9月30日
名義書換・議決権・相続税評価を同時に進める
非上場株式は、会社手続と税務評価の両方が必要です。株主名簿、法人税申告書別表二、株券、定款を照合し、遺産共有中の権利行使者指定と最終的な取得者決定を分けて考えます。
会社法上、定款に規定があれば会社から相続株式の売渡請求を受ける場合があります。相続税は取得者の株主区分と会社規模等で評価方法が変わり、会社の買取価格とは一致しません。
非上場株式の相続を進める10STEP
- 1
会社名・株式数・種類・取得経緯を調査する
- 2
株主名簿・別表二・株券・払込資料を照合する
- 3
定款と相続株式の売渡請求規定を確認する
- 4
遺産共有中の権利行使者を定め会社へ通知する
- 5
遺言・遺産分割等で最終取得者を確定する
- 6
会社所定の名義書換書類を整える
- 7
株主名簿を書き換え証明書等を確認する
- 8
死亡日時点の会社規模・株主区分を判定する
- 9
対応する評価明細書で株価を算定する
- 10
事業承継税制・売却・配当・役員体制を確認する
誰が必要な手続きか
故人が上場していない株式会社・特例有限会社等の株式を持っていた場合です。会社経営に関与していなくても、設立・増資・親族間移転などで株主になっていることがあります。株式の承継、会社での権利行使、相続税評価を並行して確認します。
最初に株式の有無・株数・種類を確定する
- 会社の株主名簿と株主名簿記載事項証明書
- 定款、設立・増資・株式移動の書類
- 法人税申告書別表二
- 株券、配当通知、株主総会招集通知
- 故人の過去の相続税・贈与税申告書
- 種類株式、新株予約権、会社への貸付金、個人保証
法人税申告書別表二は税務資料で、会社法上の株主名簿そのものではありません。資料間で株数・名義・取得日が違う場合は、議事録、契約、払込記録まで遡って原因を確認します。
期限
相続による株主名簿書換について、全国一律の行政申請期限はありません。ただし、遺産分割前の議決権行使、配当、会社の意思決定に影響するため速やかに会社へ連絡します。
相続税申告が必要なら、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。また、定款に相続株式の売渡請求規定がある会社では、会社が相続等を知った日から1年以内という会社法上の期間が問題になるため、定款確認を後回しにしないでください。
相続は通常の株式譲渡とは異なる
相続は売買や贈与とは異なる一般承継です。譲渡制限株式であっても、通常の譲渡承認手続をそのまま相続へ当てはめるわけではありません。
一方、会社法174条に基づく定款規定がある会社は、相続その他の一般承継で譲渡制限株式を取得した者に、その株式を会社へ売り渡すよう請求できる場合があります。定款の有無と会社側の決議を確認します。
会社から相続株式の売渡請求を受ける場合
会社法175条では、売渡請求する株式数と対象者を株主総会で決め、対象者は原則としてその決議に議決権を行使できません。176条により、会社の請求は会社が相続その他の一般承継を知った日から1年以内です。
売買価格は会社と相続人等の協議で決めます。協議が整わない場合、177条により請求日から20日以内に会社または相続人等が裁判所へ価格決定を申し立てられます。期間内に協議も申立てもないと請求は効力を失うため、通知を放置しないでください。
遺産分割前の共同相続と議決権
遺産分割前に株式を共同相続している場合、会社法106条により、共有者は株式について権利を行使する者1人を定め、会社へ通知しなければ、原則として権利を行使できません。会社が権利行使へ同意する場合は例外があります。
この指定は、1人の相続人を最終取得者に確定する遺産分割そのものではありません。会社の経営判断を急ぐ場合でも、権利行使者の指定と最終的な株式帰属を区別します。法務省の株主リストに関する案内でも、遺産共有状態では相続人全員を記載する取扱いが示されています。
株主名簿の名義書換と必要書類
遺言、遺産分割協議、審判等で取得者が確定したら、会社所定の方法で株主名簿書換を請求します。全国共通の行政様式はなく、戸籍・法定相続情報、遺言書、遺産分割協議書、印鑑証明書、本人確認書類、株券等の要否は会社ごとに異なります。
株券発行会社では、定款・登記だけでなく、株券が実際に発行されているか、誰が保管しているかを確認します。株券が見つからないことだけで相続できないと即断せず、株券喪失登録等を含め会社と専門家へ相談します。
非上場株式の相続税評価
国税庁 No.4638では、取引相場のない株式の評価方法は、取得者が同族株主等に当たるか、会社規模が大会社・中会社・小会社のどれかなどで変わります。大会社は原則として類似業種比準方式、中会社は併用方式、小会社は原則として純資産価額方式です。非同族株主等が取得する場合は、原則として配当還元方式を用います。
株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満、比準要素数0、休業中、清算中などは特定の評価会社として別の取扱いがあります。額面、帳簿価額、会社の希望買取価格だけで申告価額を決めないでください。
2026年4月1日を境に評価明細書が異なる
国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」は、2026年4月1日以後に取得した財産用の様式と、2024年1月1日から2026年3月31日までに取得した財産用の様式を分けています。相続開始日に対応する様式を使用し、相続税申告書へ添付します。
2026年の評価通達改正も公表されています。相続開始日、会社規模、業種目、決算期、直前期数値に合わせ、適用する通達・様式・類似業種比準価額を確認します。
相続税評価・売渡価格・実際の取引価格は別
相続税申告の評価額、会社法上の売渡請求の価格、会社や他株主との任意売買価格は、目的と決定手続が異なります。相続税評価額を当然の買取価格としたり、会社提示額をそのまま相続税申告へ使ったりしないでください。
相続株式を発行会社へ売る場合の税務
国税庁 No.1477では、相続税を納付すべき人が相続した非上場株式を発行会社へ譲渡する場合、相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡など一定の要件を満たすと、みなし配当課税を行わない特例があります。届出を含む要件があるため、売却前に税理士へ確認します。
法人版事業承継税制を使えるか
法人版事業承継税制には特例措置と一般措置があります。自社株を相続しただけで自動的に相続税が免除される制度ではなく、会社・先代経営者・後継者の要件、都道府県知事の認定、担保、申告、その後の継続届出等が必要です。要件を外れると猶予税額と利子税の納付が必要になる場合があります。
2026年度税制改正により、法人版の特例承継計画の提出期限は2027年9月30日へ延長されました。特例措置の対象となる贈与・相続は2027年12月31日までです。千葉県の最新案内では、認定経営革新等支援機関の指導・助言を記載した計画を県へ提出し、県知事の確認を受けるよう案内しています。
会社へ確認する周辺項目
- 未払配当、配当基準日、配当金の受領先
- 死亡退職金、弔慰金、未払役員報酬
- 会社への貸付金・会社からの借入金
- 個人保証、担保、代表者変更、銀行権限
- 種類株式、新株予約権、株主間契約
- 許認可上の役員・管理者要件
株主名簿を変更しても、代表取締役、役員登記、銀行権限、許認可が自動的に変更されるわけではありません。
野田市・柏市・流山市・松戸市の管轄・問い合わせ先
株主名簿の名義書換は市役所ではなく、まず株式を発行した会社へ確認します。相続税申告が必要な場合の提出先は、原則として故人の死亡時住所を管轄する税務署です。
会社所在地や税目によって管轄が異なることがあります。税務署での面接相談は事前予約が必要です。確認日:2026-09-11。
費用
株主名簿書換自体に登録免許税はありません。会社所定手数料の有無、戸籍・証明書の実費、税理士の株価評価・申告報酬、弁護士・司法書士等の会社法・相続・紛争対応費用が生じる場合があります。
自分でできるか
株主数が少なく、株主名簿・定款・遺言・遺産分割が一致し、株価や経営権に争いがない場合は、会社所定の名義書換資料の収集まで本人対応できることがあります。
専門家に相談した方がよいケース
- 株主名簿・別表二・株券の内容が一致しない
- 遺産分割前に株主総会や配当が予定されている
- 定款に相続株式の売渡請求規定がある
- 会社または他株主と株価・経営権で対立している
- 種類株式、新株予約権、名義株の疑いがある
- 会社が土地・株式を多く保有し株価評価が複雑である
- 法人版事業承継税制を検討している
- 発行会社への売却や自己株式取得を予定している
注意点
- 相続と通常の譲渡を混同しない:通常の譲渡承認とは別に、定款の相続株式売渡請求を確認します。
- 共有株式の代表指定と遺産分割を分ける:権利行使者の指定だけで最終取得者は決まりません。
- 別表二だけで株主を確定しない:株主名簿と移動資料を照合します。
- 価格を一つと考えない:相続税評価、会社法上の売渡価格、任意売買価格は別です。
- 古い制度期限を使わない:特例承継計画の現行期限は2027年9月30日です。
- 名義書換だけで終わらせない:配当、役員、保証、貸付金、許認可も確認します。
よくある質問
相続にも譲渡承認が必要ですか
相続は通常の株式譲渡とは異なる一般承継です。ただし、定款に会社法174条の相続株式売渡請求規定があるかを確認します。
遺産分割前に1人が議決権を使えますか
共同相続人は、原則として権利を行使する者1人を定めて会社へ通知します。これは最終的な株式帰属を決める遺産分割とは別です。
会社の帳簿価額で相続税申告できますか
できるとは限りません。取得者の株主区分、会社規模、業績、純資産、会社の性質等に応じて国税庁の評価方法で死亡日時点の価額を算定します。
会社から株式を売るよう求められました
定款規定、株主総会決議、会社が相続を知った日から1年以内か、請求内容、価格協議を確認します。価格が合意できないときの裁判所申立期間は請求日から20日以内です。
事業承継税制を使えば税金は必ず免除されますか
いいえ。要件を満たす場合の納税猶予制度で、県知事認定、申告、担保、継続届出等が必要です。適用後も要件と期限を継続管理します。
関連する相続手続き
- No.2 相続人を確定する
- No.3 相続財産・債務を調査する
- No.4 遺産分割協議書を作成する
- No.91 相続税申告
- No.92 役員借入金・役員貸付金
- No.94 遺言書の検認
- No.95 遺言執行者
参考にした公式情報
- e-Gov法令検索「会社法」
- 国税庁「取引相場のない株式の評価」
- 国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」
- 国税庁「法人版事業承継税制」
- 国税庁「相続した非上場株式を発行会社へ譲渡した場合の特例」
- 千葉県「円滑な事業承継の支援」
情報確認日:2026年9月11日