相続手続き100チェックリスト No.91。相続税は、課税価格の合計が「3,000万円+600万円×法定相続人」を超える場合などに、死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付します。未分割でも期限は延びません。2026年死亡は贈与加算期間と新様式にも注意し、故人の死亡時住所を管轄する税務署へ提出します。
No.91 相続税申告の基本情報
- 項目
- 期限・確認内容
- 基礎控除
- 3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 申告・納付期限
- 死亡を知った日の翌日から10か月以内
- 提出先
- 原則、故人の死亡時住所を管轄する税務署
- 未分割
- 分割前でも期限内に申告・納付
- 配偶者・宅地特例
- 納税額ゼロでも申告と添付書類が必要
- 2026年の贈与加算
- 原則、相続開始前3年以内
- 2026年分様式
- 2026年死亡用の変更後様式を使用
未分割でも10か月以内に申告・納付する
遺産分割協議が終わらなくても、相続税の期限は延びません。国税庁は、未分割財産を民法上の相続分等で取得したものとして期限内に申告・納付するよう案内しています。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を後日使う可能性がある場合は、申告期限後3年以内の分割見込書を当初申告へ添付し、分割後の更正の請求期限まで管理します。
相続税申告を完了する10STEP
- 1
戸籍・遺言書・相続放棄を確認し法定相続人を確定する
- 2
死亡日から10か月の申告・納付期限を確定する
- 3
預金・不動産・証券・保険・事業・海外財産を調査する
- 4
債務・葬式費用・非課税財産を証拠とともに整理する
- 5
暦年贈与と相続時精算課税財産を確認する
- 6
土地・株式等を死亡日時点で評価する
- 7
基礎控除と申告要否を計算する
- 8
分割案・配偶者軽減・小規模宅地等・納税資金を比較する
- 9
死亡年に対応する申告書と添付書類を作成する
- 10
期限内に申告・納付し控えと評価根拠を保存する
相続税申告が必要か最初に確認する
相続税は、財産総額が基礎控除を超えたら直ちにその全額へ課税する仕組みではありません。相続・遺贈で取得した財産、みなし相続財産、相続時精算課税財産、一定の暦年贈与を加え、非課税財産、債務、葬式費用などを差し引いて各人の課税価格を計算します。
国税庁 No.4152による基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。課税価格の合計がこれを超える場合は、納付税額が税額控除でゼロになる人を含め、申告要否を確認します。
誰が必要か
相続または遺贈により財産を取得し、課税価格の合計が基礎控除を超える場合に申告が必要です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用した結果、納税額がゼロになる場合でも、その特例を受けるために期限内申告と添付書類が必要です。
財産を取得しなかった人が必ず申告者になるわけではありませんが、相続時精算課税の適用者、遺贈を受けた人、生命保険金等のみなし相続財産を取得した人、一定の生前贈与を受けた人も判定対象になり得ます。
基礎控除の法定相続人の数
相続放棄をした人がいても、基礎控除では放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。養子は、実子がいる場合は原則1人まで、実子がいない場合は原則2人までを算入します。ただし、特別養子など税法上実子として扱う場合があります。
戸籍で相続人を確定せずに「家族の人数」を掛けるのは危険です。代襲相続、養子、相続欠格・廃除、放棄を整理してから基礎控除を計算します。
期限は死亡を知った日の翌日から10か月
国税庁の申告手続では、相続開始を知った日の翌日から10か月以内が申告期限です。例えば1月6日に死亡を知った通常例なら11月6日で、期限が土・日・祝日等ならその翌日になります。
納付期限も申告期限と同じです。遺産分割協議、金融機関の解約、不動産売却、税理士への依頼が進行中でも自動延長されません。災害等の期限延長措置が告示された場合は、対象地域・対象者・延長後期限を国税庁で確認します。
提出先は故人の最後の住所地
被相続人が死亡時に国内住所を有していた通常例では、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署へ提出します。相続人の住所地でも、不動産所在地でもありません。e-Tax、郵便・信書便、時間外収受箱による提出が案内されています。
複数の相続人が別々の地域に住んでいても、提出先の基準は故人側です。国外財産・国外住所・非居住者・制限納税義務者が関係する場合は、国内だけの通常例とは異なるため税務署または税理士へ確認します。
相続税がかかる財産を漏れなく集める
国税庁は、現金、預貯金、有価証券、土地、家屋、宝石だけでなく、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もれる経済的価値のあるものを対象としています。死亡退職金や故人が保険料を負担した死亡保険金などのみなし相続財産も確認します。
- 現金、預貯金、電子マネー、貸付金、未収金
- 土地、建物、借地権、賃貸不動産、共有持分
- 上場株式、投資信託、債券、非上場株式、暗号資産
- 事業用資産、営業権、著作権、特許権
- 死亡保険金、死亡退職金、未収年金等
- 相続時精算課税財産と加算対象期間内の暦年贈与
- 家族名義でも実質的に故人が管理・出捐していた財産
- 海外預金、海外証券、国外不動産
通帳残高だけでなく、死亡前後の取引履歴、証券残高、保険契約照会、固定資産税課税明細、登記事項証明書、法人決算書、確定申告書を突合します。
非課税財産と生命保険・退職金の非課税枠
国税庁 No.4108では、日常礼拝に使う墓地・墓石・仏壇・仏具などを主な非課税財産として挙げています。ただし、骨董的価値があり投資対象となるものや商品は課税対象です。
相続人が受け取る一定の死亡保険金と死亡退職金には、それぞれ500万円×法定相続人の数の非課税限度額があります。相続人以外の受取人にはこの非課税の適用がありません。保険料負担者・被保険者・受取人の関係により、相続税ではなく所得税や贈与税になる場合もあります。
債務と葬式費用を確認する
国税庁は、死亡時に現に存在し、確実と認められる借入金や未払金などを債務控除の対象としています。未払税金、医療費、事業債務、保証債務は、支払義務と確実性を契約書・請求書・残高証明で確認します。
葬式費用は、火葬・埋葬・納骨、遺体の搬送、通夜・告別式など一定の費用が対象です。香典返し、墓石・墓地、初七日などの法要費用は通常の葬式費用として控除できません。領収書がない支払は、支払日、相手、目的、金額を記録します。
2026年死亡では暦年贈与の加算は原則3年
暦年課税による生前贈与の加算制度は、2024年1月1日以後の贈与から最終的に7年へ延長されます。ただし経過措置があり、国税庁 No.4161では、2026年12月31日までに相続が開始した場合の加算対象期間は相続開始前3年以内としています。
2027年1月1日から2030年12月31日までの相続は2024年1月1日から死亡日まで、2031年1月1日以後は原則7年以内へ段階的に変わります。「現在はすべて7年」として2026年死亡の申告を計算しないでください。
加算対象期間内なら、贈与税の基礎控除110万円以下で贈与税がかからなかった財産も原則として加算対象です。相続時精算課税財産は別の計算規定があるため、贈与契約書、贈与税申告書、通帳履歴を集めます。
財産は原則として死亡日時点で評価する
相続税評価は、売却価格や固定資産税評価額だけで一律に決まりません。土地は路線価方式または倍率方式を基本に、形状、接道、貸付、借地権、共有、利用単位などを確認します。建物は固定資産税評価額を基礎にするのが一般的です。
上場株式は死亡日の終値だけでなく、死亡月・前月・前々月の月平均額との比較があります。非上場株式は会社規模、株主区分、純資産、類似業種比準等を用いるため、会社の決算書・株主名簿・法人税申告書が必要です。
申告要否判定コーナーは概算確認に便利ですが、複雑な土地、名義財産、非上場株式、国外財産等の評価を保証するものではありません。
配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減では、配偶者が実際に取得した正味の遺産額が1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで、配偶者に相続税がかかりません。
適用には申告書と必要書類の提出が必要です。また、二次相続まで含めると、一次相続で配偶者が多く取得することが常に有利とは限りません。配偶者自身の財産、年齢、生活費、将来の売却・贈与も含めて分割案を比較します。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、故人の居住用・事業用・貸付事業用など一定の宅地について、取得者、同居、所有・居住・事業継続、面積などの要件を満たす場合に課税価格を減額する制度です。
「自宅なら必ず80%減額」ではありません。宅地の区分と取得者ごとの要件を確認し、申告書へ計算明細書や必要書類を添付します。特例を使って基礎控除以下になる場合も相続税申告が必要です。
未分割でも期限は延びない
国税庁 No.4208のとおり、遺産分割が終わっていなくても10か月期限は延びません。未分割財産を民法上の相続分または包括遺贈の割合に従って取得したものとして申告・納付します。
未分割財産には当初、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用できません。期限内申告に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に分割できた場合は、分割日の翌日から4か月以内に更正の請求を行うことで適用を受けられる場合があります。
訴訟など一定のやむを得ない事情で3年以内に分割できない場合は、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に承認申請が必要です。単に話合いがまとまらないだけで当然に期限が延びる制度ではありません。
2026年分は2026年用の申告様式を使う
国税庁の2026年分様式一覧は、2026年1月1日から12月31日までに死亡した人の申告に使用します。2026年分から様式が変更されているため、死亡年に合う様式を選びます。
主な帳票には、第1表、第2表、第4表、第5表、第9表、第10表、第11表と各付表、第13表、第14表、第15表などがあります。すべての人が同じ帳票を使うわけではなく、財産・控除・特例に応じて選びます。
必要書類
- 死亡年に対応する相続税申告書・明細書・計算書
- 戸籍謄本または法定相続情報一覧図、住民票関係資料
- 遺言書、遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書
- 預貯金残高証明書、取引履歴、現金の集計表
- 保険金・死亡退職金の支払通知書
- 登記事項証明書、固定資産税資料、路線価図、測量図、賃貸借契約書
- 証券残高、取引履歴、非上場会社の決算・株主資料
- 借入残高証明書、未払金資料、葬式費用の領収書・支払記録
- 贈与契約書、贈与税申告書、相続時精算課税関係資料
- 本人確認・マイナンバー関係書類とe-Tax受信通知
戸籍等はコピーでよいもの、原本提出が必要なもの、電子添付できるものが異なります。死亡年に対応する申告のしかたと各表の記載要領で確認します。
申告・納付方法
申告はe-Taxのほか、郵便・信書便、税務署の時間外収受箱で提出できます。申告内容によってe-Taxを利用できない場合があります。送付なら提出日を証明できる方法を選び、控えと追跡記録を保存します。
納付は、ダイレクト納付、インターネットバンキング等、クレジットカード、現金納付などがあります。クレジットカード納付は決済手数料がかかり、1,000万円未満かつ利用限度額以下という制限があります。
延納・物納は申告期限までに申請する
相続税は金銭一括納付が原則です。延納は、相続税額が10万円を超え、金銭で一括納付することが困難などの要件を満たす場合に年払いで納める制度で、原則として担保と利子税が必要です。
物納は、延納によっても金銭納付が困難な場合に、一定の相続財産で納める制度です。どちらも申告期限までの申請が必要なので、期限直前に資金不足が判明してからでは準備が間に合わないことがあります。
野田市・柏市・流山市・松戸市の相続税申告先
相続税の提出先は、相続人の住所や不動産所在地ではなく、原則として被相続人が死亡した時の住所地を管轄する税務署です。
被相続人の死亡時の住所が野田市・柏市なら柏税務署、流山市・松戸市なら松戸税務署です。国外住所や特殊な納税義務がある場合は個別確認が必要です。税務署での面接相談は事前予約をしてください。確認日:2026-09-10。
費用
相続税申告書の提出自体に申請手数料はありません。戸籍・登記事項証明書・残高証明書・評価資料の取得費、郵送費、測量・不動産評価の費用、税理士報酬、相続税本税がかかります。クレジットカード納付、延納、物納には手数料・利子税・鑑定等の費用が関係する場合があります。
自分でできるか
財産が預貯金中心で、相続人・贈与・債務が明確、特例を使わない場合は本人作成できることがあります。国税庁の申告要否判定コーナーと死亡年の手引・様式を使い、計算根拠を保存します。
ただし「納税額ゼロ」と「申告不要」は同じではありません。不動産評価や名義財産の見落としにより基礎控除を超えるケースもあるため、財産調査を終えてから判断します。
専門家に相談した方がよいケース
- 10か月期限まで6か月を切っても財産が確定していない
- 土地、賃貸物件、共有持分、非上場株式、事業、海外財産がある
- 名義預金、死亡直前の出金、多額の生前贈与がある
- 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使う
- 遺産分割がまとまらない、相続人間で評価に争いがある
- 相続時精算課税や贈与税の納税猶予を利用していた
- 延納・物納または財産売却による納税を検討する
- 相続人・受遺者・財産が国外に関係する
注意点
- 10か月は分割待ちで止まらない:未分割でも期限内申告します。
- 提出先は相続人住所ではない:原則として故人の死亡時住所を基準にします。
- 基礎控除だけで終わらせない:保険、名義財産、贈与、非上場株式を確認します。
- ゼロ申告を見落とさない:配偶者軽減や小規模宅地等は申告が必要です。
- 2026年死亡は贈与加算3年:7年への移行期を正しく判定します。
- 様式は死亡年で選ぶ:2026年分から様式が変わっています。
- 納税資金を先に作る:延納・物納も申告期限までに申請します。
よくある質問
遺産が基礎控除以下なら申告不要ですか
財産・みなし財産・贈与加算・債務等を正しく集計した結果が基礎控除以下なら通常は申告不要です。ただし、小規模宅地等の特例を適用して初めて基礎控除以下になる場合は申告が必要です。
配偶者が全部相続して税金がゼロなら申告不要ですか
配偶者の税額軽減を使って税額がゼロになる場合は、原則として相続税申告書と必要書類の提出が必要です。
遺産分割が終わらなければ10か月を延長できますか
できません。未分割のまま期限内に申告・納付し、分割見込書を添付したうえで、分割後の更正の請求等を検討します。
2026年に亡くなった人も7年分の贈与を加算しますか
原則として加算対象期間は相続開始前3年以内です。7年への延長には経過措置があり、2027年以後の相続から段階的に広がります。
申告先は相続人の最寄りの税務署ですか
通常は違います。被相続人の死亡時住所が国内なら、その住所地を所轄する税務署が提出先です。
相続税を一括で払えない場合はどうしますか
要件を満たせば延納、さらに延納でも金銭納付が困難なら物納を申請できる場合があります。どちらも原則として申告期限までに申請します。
関連する相続手続き
- No.1 遺言書の有無を確認する
- No.2 相続人を確定する
- No.3 相続財産・債務を調査する
- No.4 遺産分割協議書を作成する
- No.61 預貯金口座を解約する
- No.84 不動産の相続登記
- No.88 所得税の準確定申告
- No.89 個人事業の死亡・承継届出
- No.90 事業承継後の消費税
- No.92 法人貸付金・借入金
- No.93 非上場株式
参考にした公式情報
- 国税庁「相続税の申告手続」
- 国税庁「相続税の申告書等の様式一覧(2026年分用)」
- 国税庁「相続税の計算」
- 国税庁「相続税がかかる財産」
- 国税庁「贈与財産の加算と税額控除」
- 国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」
- 国税庁「相続税の申告と納税」
情報確認日:2026年9月10日