相続財産の調査では、預貯金や不動産などのプラス財産だけでなく、借入金・未払金などの債務も同じ時点で確認します。一律の調査期限はありませんが、相続放棄等は原則3か月、相続税申告は原則10か月です。自宅の資料を起点に、金融機関・法務局・公式照会制度へ早めに確認します。
財産の種類別・主な確認先
- 財産・債務
- 主な調べ方
- 預貯金
- 通帳、キャッシュカード、郵便物、入出金履歴から金融機関を特定し、残高証明や取引履歴を照会します
- 不動産
- 権利証、固定資産税通知書、名寄帳、登記事項証明書に加え、2026年開始の所有不動産記録証明書を活用します。検索条件の氏名・住所が登記記録と一致しない不動産は抽出されないことがあります
- 株式・投資信託
- 取引報告書、配当通知、メール等を確認し、不明な場合は証券保管振替機構の登録済加入者情報を照会します
- 生命保険
- 保険証券、保険会社からの通知、保険料の口座振替を確認し、必要に応じて生命保険契約照会制度を利用します
- 借入金・保証債務
- 契約書、請求書、カード、口座引落しを確認し、必要に応じて全国銀行個人信用情報センター、JICC、CICへ死亡開示を申し込みます
- その他
- 自動車、貴金属、貸付金、暗号資産、事業資産、未収金、税金・公共料金等の未払金も一覧化します
財産目録はプラスとマイナスを同時に作る
一つの照会で全財産と全債務を把握できる制度はありません。郵便物、スマートフォン、確定申告書、通帳の入出金など複数の手掛かりを突き合わせ、判明した財産・債務、確認先、基準日、資料を財産目録に記録します。国税庁も、相続税の準備として遺産と債務を調べて一覧表を作成する流れを示しています。詳しくは国税庁「相続税の申告のための準備」を確認してください。
不動産については、2026年2月2日から、登記名義人本人または相続人その他の一般承継人が、全国の不動産を一覧的に確認できる「所有不動産記録証明制度」が始まりました。全国どこの法務局でも、書面(窓口・郵送)またはオンラインで請求できます。ただし、証明書は検索条件として指定した氏名・住所ごとに作成され、その表記が登記記録と一致しない不動産は抽出されません。旧氏名・旧住所を含め、分かる範囲で検索条件を分けて請求します。書面請求の手数料は「検索条件1件・証明書1通につき1,600円」で、条件数に応じて増えます。制度の詳細は法務省「所有不動産記録証明制度について」で確認できます。
相続財産を調べる6つのSTEP
- 1
遺言書、通帳、カード、権利証、固定資産税通知書、保険証券、契約書、郵便物、メール、確定申告書を保全する
- 2
預貯金、不動産、有価証券、保険、動産、事業資産などのプラス財産候補を一覧にする
- 3
借入金、カード利用、保証債務、未払税金・医療費・公共料金などのマイナス財産候補を一覧にする
- 4
金融機関、法務局、市区町村、保険会社、証券会社等へ相続人として照会し、死亡日現在の残高や契約を確認する
- 5
必要に応じて生命保険契約照会、証券保管振替機構、信用情報機関などの公式制度を利用する
- 6
資料の基準日と評価方法をそろえて財産目録を更新し、遺産分割・相続放棄・相続税の判断へつなげる
相続財産調査の対象
調査対象は、亡くなった方名義の預貯金や不動産だけではありません。現金、有価証券、保険に関する権利、自動車、貴金属、貸付金、暗号資産、著作権、事業用資産などを確認します。一方で、借入金、住宅ローン、カード債務、保証債務、未払税金や医療費なども確認します。生命保険金などは契約内容によって相続財産・課税関係の扱いが異なるため、受取人と契約内容を個別に確認します。
調査を始める期限
財産調査自体に一律の法定期限はありません。ただし、相続放棄・限定承認を検討できる熟慮期間は原則3か月です。また、相続税の申告・納付が必要な場合は、通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。期限間際に財産が見つかっても、期限が自動で延びるとは限りません。債務の可能性があるときほど初動を急ぎます。
手続き先と確認方法
預貯金を調べる
通帳やキャッシュカードだけでなく、ネットバンキングの利用通知、給与・年金の振込、公共料金や保険料の引落しから取引金融機関を探します。金融機関が判明したら、相続人であることを示す戸籍等を用意し、死亡日現在の残高証明書や必要期間の取引履歴を請求します。必要書類、費用、予約方法は金融機関ごとに異なります。
不動産を調べる
固定資産税の納税通知書、権利証・登記識別情報、売買契約書などを確認します。市区町村の固定資産課税台帳に基づく名寄帳と、法務局の登記事項証明書を照合します。私道、共有持分、非課税不動産、他の市区町村の物件が通知書に現れないこともあります。所有不動産記録証明書は全国的な確認に役立ちますが、表記不一致などによる検索漏れの可能性があるため、他の資料と併用します。
株式・投資信託を調べる
証券会社からの取引残高報告書、株主宛て郵便、配当金の入金、確定申告書を確認します。証券会社が不明なときは、証券保管振替機構へ登録済加入者情報の開示請求を行う方法があります。ただし、この開示で分かるのは口座を開設した証券会社等であり、保有銘柄や残高ではありません。請求は郵送のみで、2026年8月25日現在、書類受付から結果送付まで約2か月と案内されています。相続人請求は1件6,050円ですが、法定相続情報一覧図のコピーを提出した場合は4,950円です。2026年10月1日以降の消印では、それぞれ7,700円、6,050円へ改定されます。公式案内は証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求」と同機構「開示費用改定のお知らせ」で確認できます。
紙の国債証券が見つかり、「特別弔慰金国庫債券」などと書かれている場合は、弔慰金国債の記名変更と償還金の確認も参照してください。
生命保険を調べる
保険証券、控除証明書、保険料の口座振替、保険会社からの通知を確認します。契約先が分からない場合、生命保険協会の生命保険契約照会制度を利用できることがあります。対象は協会会員会社の有効に継続している個人保険契約で、死亡時は死亡日まで最低3年間さかのぼります。死亡保険金支払済み、解約・失効済み、財形保険、支払開始後の年金保険等は対象外です。利用料は対象者1名につきWEB申請6,000円、書面申請7,000円です。WEB申請は2026年9月15日に再開され、書面申請も利用できます(受付状況・利用料の確認日:2026年10月12日)。最新状況は生命保険協会「生命保険契約照会制度」で確認してください。
契約が見つかったら、死亡保険金の請求・契約者変更の進め方で、故人が契約のどの立場だったかと必要書類を確認できます。
借金・保証債務を調べる
ローン契約書、請求書、カード、督促、口座引落し、事業帳簿を確認します。信用情報機関への死亡開示は補助的な手段です。全国銀行個人信用情報センター、JICC、CICはそれぞれ加盟会社と登録対象が異なるため、借入れの種類に応じて複数機関を確認します。2026年8月25日現在の郵送手数料は、全国銀行個人信用情報センター2,403円、JICC2,177円、CIC1,500円です。CICは、加盟会社が契約者の死亡を確認すると登録情報を削除するため、開示時点で契約が表示されない場合があります。信用情報にない個人間債務、保証債務、税金、公共料金等もあるため、開示結果だけで「債務なし」と判断しません。
必要書類
- 亡くなった方の死亡が分かる戸籍・除籍
- 請求者が相続人であることを示す戸籍または法定相続情報一覧図
- 請求者の本人確認書類
- 機関所定の照会・開示請求書
- 遺言執行者、相続財産清算人、代理人等の場合は権限を示す書類
- 対象口座・物件・契約を特定する資料
制度ごとに住民票、印鑑登録証明書、実印、委任状、相続人全員の同意など追加書類が必要な場合があります。原本還付と有効期限も確認します。
費用
戸籍、残高証明、取引履歴、登記事項証明、名寄帳、各種照会にはそれぞれ手数料や郵送料がかかります。所有不動産記録証明書の書面請求は検索条件1件・証明書1通につき1,600円です。オンライン請求は郵送交付1,500円、窓口交付1,470円です。生命保険契約照会、証券保管振替機構、信用情報機関の料金は前記のとおりですが、改定や一時停止があるため、申請直前に各公式サイトを確認してください。
自分でできるか
手元資料が整理され、取引先が分かっている場合は、相続人本人が各機関へ照会できます。表計算などで「財産名・機関・名義・基準日・残高・根拠資料・確認状況」を管理すると重複と漏れを減らせます。原本を送る前に控えを取り、受付番号と返却予定を記録します。
専門家に相談した方がよいケース
- 借金や保証債務の疑いがあり、相続放棄の3か月が迫っている
- 事業、未上場株式、海外資産、暗号資産、信託、知的財産がある
- 不動産が多数、共有、未登記、名義が先代のまま
- 相続税申告が必要か、評価方法が分からない
- 相続人間で財産の管理・開示をめぐる対立がある
- 亡くなる前後の多額の出金や名義財産の判断が必要
登記は司法書士、税務と評価は税理士、紛争・放棄判断は弁護士など、論点に合う専門家へ相談します。
注意点
- 照会漏れ:公式照会制度にも対象外や保存期間があります。複数資料で裏付けます。
- 勝手な処分:相続放棄を検討中は、財産の払戻し・売却・使用が判断に影響する可能性があるため慎重に扱います。
- 評価日:残高や時価は基準日を明記し、死亡日現在と現在額を混同しません。
- デジタル情報:不正ログインやパスワード突破は行わず、各サービスの正式な相続手続を利用します。
- 個人情報:戸籍、残高、口座番号を含むファイルの共有先を限定します。
よくある質問
全国の預金を一括で照会できますか
一般の相続について、全国の全金融機関を一括検索する公的制度は確認できません。手元資料や入出金から金融機関を特定して個別に照会します。
所有不動産記録証明書だけで不動産を完全に把握できますか
検索漏れの可能性があります。氏名・住所の表記が登記記録と一致しない場合などがあるため、固定資産税資料、名寄帳、権利証、登記記録と併用します。
信用情報の開示で借金がなければ安心ですか
すべての債務を証明するものではありません。信用情報機関ごとに加盟会社と登録対象が異なり、保存期間経過や死亡確認後の削除もあります。税金、保証債務、個人間債務等は別に確認します。
死亡保険金は必ず遺産分割の対象ですか
契約内容によります。受取人指定や税務上の扱いを確認し、遺産分割の対象かを一律に決めつけないようにします。
関連する相続手続き
野田市・柏市・流山市・松戸市の不動産調査窓口
名寄帳等は、その市が課税している固定資産を確認する資料です。他市の不動産や非課税物件等を完全に把握するものではないため、法務局の所有不動産記録証明書、固定資産税通知書、権利証、登記記録を併用してください。
所有不動産記録証明書を請求する法務局
所有不動産記録証明書は全国どこの法務局でも請求できます。4市から利用しやすい窓口は、野田市・柏市が千葉地方法務局 柏支局(04-7167-3309)、流山市・松戸市が千葉地方法務局 松戸支局(047-363-6278)です。これは請求先を限定する管轄ではなく、最寄り窓口としての案内です。
窓口・電話番号の確認日:2026-08-25。来庁・申請前にリンク先の最新案内をご確認ください。
参考にした公式情報
- 国税庁「相続税の申告のための準備」
- 法務省「所有不動産記録証明制度について」
- 生命保険協会「生命保険契約照会制度」
- 証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求」
- 証券保管振替機構「開示費用改定のお知らせ」
- 全国銀行協会「郵送による開示手続」
- JICC「亡くなった方の信用情報開示」
- CIC「郵送で開示」
- 野田市「税証明書交付申請書」
- 柏市「税証明書等の発行」
- 流山市「窓口での税証明書交付」
- 松戸市「固定資産に関する証明」
情報確認日:2026年8月25日
この記事は一般的な調査方法の説明です。制度の対象、必要書類、手数料、処理期間は変更されることがあります。個別の財産の帰属、評価、相続放棄への影響は専門家と各手続先へ確認してください。