相続手続き100チェックリスト No.99。相続放棄は、亡くなった方の財産と債務を一切承継しないため、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ行う申述です。原則として自己のために相続開始があったことを知った時から3か月以内に行います。遺産分割協議で「何も取得しない」と決めるだけでは相続放棄にならず、財産の処分は単純承認の問題になるため、判断前に財産を動かさないことが重要です。
No.99 相続放棄の基本情報
- 確認項目
- 内容
- 対象者
- 相続放棄を選ぶ相続人
- 期限
- 自己のために相続開始を知った時から原則3か月
- 申述先
- 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
- 申述手数料
- 申述人1人につき収入印紙800円分
- 判断が間に合わない
- 期限前に熟慮期間伸長を申し立てる
- 重要な注意
- 遺産処分による単純承認を避ける
- 放棄後
- 次順位相続人への移行と占有財産を確認
- 4市の申述先
- 松戸支部受付係 047-313-9737
遺産分割で何も取得しない合意は相続放棄ではない
相続人同士で「私は財産を取得しない」と合意しても、家庭裁判所の相続放棄をしたことにはなりません。借金を含めて相続人の地位から外れるには、原則3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
国税庁も、家庭裁判所へ相続放棄の申述をせず、事実上財産を取得しなかった人は「相続を放棄した人」に該当しないと案内しています。
放棄を検討中に預金の払戻しや遺産の売却・消費をすると、単純承認と扱われる問題が生じます。判断前は財産を動かさず、必要な保存行為も専門家へ確認します。
相続放棄の手続き9STEP
- 1
死亡と自分が相続人になったことを知った日を確認する
- 2
先順位者の放棄を含めて自分の相続順位を確認する
- 3
預貯金・不動産・借入金・保証債務を調査する
- 4
調査中は遺産を処分・消費せず保存する
- 5
放棄・限定承認・単純承認を比較して判断する
- 6
間に合わなければ3か月以内に期間伸長を申し立てる
- 7
申述書、戸籍、住民票除票等をそろえる
- 8
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ提出する
- 9
照会へ回答し、受理通知を保管して次順位者へ連絡する
相続放棄とは
相続放棄は、亡くなった方の預貯金・不動産などの権利も、借入金・保証債務などの義務も一切受け継がないため、家庭裁判所へ行う手続です。裁判所の公式案内では「相続の放棄の申述」と呼ばれます。受理されると、その相続について初めから相続人でなかったものと扱われます。
借金だけを放棄して財産だけを受け取ることはできません。債務額が不明で財産が残る可能性がある場合は、相続財産の範囲内で債務を負担するNo.100の限定承認と比較します。限定承認は原則として共同相続人全員で行う点が相続放棄と異なります。
対象者
申述する人は相続人です。複数の相続人がいても、相続放棄は各人が個別に判断して申し立てられます。第一順位の子、第二順位の父母・祖父母、第三順位の兄弟姉妹・おいめいでは、提出する戸籍の範囲と自分が相続人になった時期が異なります。
未成年者または成年被後見人は、原則として法定代理人が代理します。ただし、法定代理人と未成年者が共同相続人で未成年者だけが放棄する場合などは利益相反となり、No.97の特別代理人が必要になることがあります。親権者が先に放棄している場合など、不要となる場合もあるため家庭裁判所へ確認します。
期限は原則3か月
民法915条と裁判所の案内により、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に申述します。通常は、被相続人が死亡した事実と、それによって自分が法律上の相続人になった事実の両方を知った時が起算点です。必ずしも全員が死亡日から同時に数えるわけではありません。
千葉家庭裁判所の案内では、郵送の場合も3か月以内に裁判所へ申述書が到着するよう余裕をもって提出するとされています。期限内に受付されていれば、受理の判断が3か月後になっても問題ありません。発送日だけで期限内になるとは考えないでください。
財産調査が終わらない場合は期間伸長を検討する
3か月以内に財産・債務を調査しても判断資料がそろわない場合は、期間が終わる前に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てられます。裁判所の案内によれば、申立人は相続人を含む利害関係人または検察官で、相続人1人につき収入印紙800円分と郵便料が必要です。
申立てをすれば必ず伸長されるわけではなく、家庭裁判所が事情を考慮して判断します。期限後ではなく、現在の熟慮期間内に行います。
3か月を過ぎたと思う場合
まず本当の起算日を確認します。裁判所が公開する裁判例では、相続財産が全くないと信じ、そのように信じたことに相当な理由があるなどの事情では、財産の全部または一部を認識した時または通常認識できた時から熟慮期間を数える場合が示されています。
これは例外的な個別判断であり、後から借金の請求書が届けば常にその日から3か月になるわけではありません。財産調査の経緯、被相続人との交流、通知を受けた日、遺産に関する行動を時系列で整理し、直ちに弁護士と申述先へ相談します。
遺産分割で「何も取得しない」と書くだけでは相続放棄にならない
相続人同士の遺産分割協議書に「財産を取得しない」と書いても、家庭裁判所で行う相続放棄とは別です。国税庁の現行案内も、相続放棄をした人とは家庭裁判所へ相続放棄の申述をした人であり、事実上財産を取得しなかった人は該当しないと説明しています。
特定の相続人に財産を集めるためだけの協議と、借金を含めて相続人の地位から外れる相続放棄を混同しないでください。相続人間で債務負担者を決めても、債権者の同意がなければ、その内部合意をそのまま債権者へ主張できるとは限りません。
財産を処分する前に止める
民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合などに単純承認したものとみなす規定を置いています。相続放棄を検討中は、預金の解約・払戻し、車や不動産の売却、遺産の私的使用、債務の選択的な支払いを自己判断で行わないようにします。
保存行為や事情に応じて扱いが異なるため、葬儀費用の支払い、価値のない物の処分、賃貸住宅の片付けなども一律に安全とは断定できません。行動前に、財産の出所・必要性・金額・領収書を整理して専門家へ確認します。
必要書類
全員に共通する標準書類は、相続放棄申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本です。続柄に応じて次の戸籍を追加します。
- 配偶者:被相続人の死亡の記載がある戸籍等
- 子・代襲相続人:被相続人の死亡の記載がある戸籍等。代襲の場合は本来の相続人の死亡が分かる戸籍等
- 父母・祖父母:被相続人の出生から死亡までの連続戸籍、先順位者がいないことを確認できる戸籍等
- 兄弟姉妹・おいめい:被相続人の出生から死亡までの連続戸籍、直系尊属の死亡、先に死亡した兄弟姉妹等を確認できる戸籍等
全国共通案内では、申述前に入手できない戸籍等は申述後に追加提出でき、先行事件で提出済みの同じ書類は不要とされる場合があります。千葉家庭裁判所では戸籍等のコピーや法定相続情報一覧図を利用できる案内がありますが、追加資料を求められることがあります。期限が迫っている場合は、戸籍が全部そろうまで申述書の提出を遅らせず、受付係へ確認します。
費用
- 申述人1人につき収入印紙800円分
- 家庭裁判所が指定する連絡用郵便料
- 戸籍、住民票除票、戸籍附票等の取得費
- 専門家へ依頼する場合の報酬
千葉家庭裁判所の現行案内では、相続放棄1人につき110円切手3枚です。郵便料金や裁判所の運用は変更されるため、最新の郵便料一覧と受付係で確認します。
手続き先と提出方法
申述先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申述人の現在住所、本籍、債権者の所在地、遺産の所在地ではありません。死亡時の住民票除票または戸籍附票で住所を確認します。
裁判所の窓口へ提出するほか、郵送も利用できます。郵送の到着遅れを見込み、追跡できる方法を検討し、提出書類の控えと発送・到着記録を残します。提出後は照会書、電話確認、追加書類の依頼が来ることがあるため、裁判所からの連絡を見落とさないようにします。
相続放棄後は次順位の相続人を確認する
放棄した人は初めから相続人でなかったものと扱われます。子全員が放棄すると、被相続人の父母・祖父母が相続人になり、直系尊属がいないか全員が放棄すると、兄弟姉妹・おいめいが相続人になる場合があります。
先順位者の放棄によって初めて相続人になった人も、自分について相続開始があったことを知った時からの熟慮期間を個別に確認します。家庭裁判所が次順位者へ自動的に連絡してくれる制度ではないため、親族関係と連絡先を確認し、放棄した事実を早めに知らせます。なお、子が放棄したことを理由にその子の子が代襲相続するわけではありません。
受理後に行うこと
裁判所から届く受理通知書を保管します。債権者や金融機関から証明を求められた場合は、受理した家庭裁判所へ相続放棄申述受理証明書を申請できます。裁判所の案内では証明書1通につき収入印紙150円分と、郵送の場合の返信用郵便料等が必要です。
他の相続人や債権者が放棄の有無を確認する場合は、一定の資格と書類をそろえて相続放棄・限定承認の申述の有無の照会を利用できます。照会先も被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
放棄後の財産の保存
民法940条により、相続放棄時に相続財産を現に占有している人は、その財産を相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって保存する必要があります。放棄した全員が常に永久に管理義務を負うという意味ではなく、現に占有しているかが重要です。
空き家、車、動物、危険物などがある場合は、鍵の引渡し、保存状況、次順位相続人への連絡を記録します。相続人がいないことが見込まれ、財産の清算が必要なら相続財産清算人の選任を検討します。
野田市・柏市・流山市・松戸市の申述先
被相続人の最後の住所が4市のいずれかなら、相続放棄と熟慮期間伸長の申述・申立先は千葉家庭裁判所松戸支部です。申述人が4市に住んでいるだけでは松戸支部の管轄になるとは限りません。
被相続人の最後の住所:野田市
千葉家庭裁判所 松戸支部
相続放棄の申述先です。申述人の住所や本籍ではなく、亡くなった方の死亡時の住民票除票・戸籍附票の住所を基準にします。
被相続人の最後の住所:柏市
千葉家庭裁判所 松戸支部
相続放棄の申述先です。申述人の住所や本籍ではなく、亡くなった方の死亡時の住民票除票・戸籍附票の住所を基準にします。
被相続人の最後の住所:流山市
千葉家庭裁判所 松戸支部
相続放棄の申述先です。申述人の住所や本籍ではなく、亡くなった方の死亡時の住民票除票・戸籍附票の住所を基準にします。
被相続人の最後の住所:松戸市
千葉家庭裁判所 松戸支部
相続放棄の申述先です。申述人の住所や本籍ではなく、亡くなった方の死亡時の住民票除票・戸籍附票の住所を基準にします。
所在地:〒271-8522 千葉県松戸市岩瀬無番地。新規申述・手続案内は受付係047-313-9737、手続中の事件は審判係047-313-0152です。千葉家庭裁判所の現行案内では相続放棄1人につき110円切手3枚ですが、改定があり得るため提出直前に確認してください。郵送は3か月以内に裁判所へ到着するよう余裕をもって発送します。確認日:2026-09-11。
自分でできるか
裁判所の申述書・記載例を使い、本人が手続することは可能です。被相続人の最後の住所、起算日、相続順位、処分行為に問題がなく、必要戸籍を判断できる場合は、受付係へ確認しながら進められます。
期限経過、後から判明した債務、遺産処分、事業・保証債務、未成年者、次順位者への連鎖がある場合は、受理後の有効性が民事上争われる可能性も含め、早めに弁護士へ相談します。家庭裁判所の手続案内は書類・手続の説明であり、個別の法律相談ではありません。
注意点
- 死亡日だけで起算しない:自分が法律上の相続人になったことを知った時も確認します。
- 郵送は到着日を意識する:3か月以内に裁判所へ届くよう提出します。
- 協議書と放棄を混同しない:何も取得しない合意だけでは家庭裁判所の相続放棄になりません。
- 財産を動かさない:処分・消費は単純承認の問題になります。
- 伸長は期限前に申し立てる:申立てだけで必ず認められるわけではありません。
- 次順位者へ連絡する:父母・兄弟姉妹等が新たに相続人になる場合があります。
- 受理通知書を保管する:必要なら受理証明書を取得します。
- 放棄後も占有財産を放置しない:民法940条の保存義務を確認します。
よくある質問
遺産分割協議書で財産を取得しなければ借金も負いませんか
家庭裁判所の相続放棄とは別です。相続人同士の合意だけで債権者に対する相続債務を当然に免れるとは限りません。
借金の通知が届いた日から必ず3か月ですか
必ずではありません。死亡と自分が相続人になったことを知った時、財産がないと信じた事情、調査状況、遺産への関与などから個別に判断されます。通知を受けたら直ちに相談してください。
相続放棄前に葬儀費用を遺産から払えますか
金額、遺産の状況、支払いの必要性などで評価が分かれる可能性があります。一律に問題ないとは判断せず、遺産から支払う前に専門家へ確認し、領収書を保管します。
相続放棄は撤回できますか
熟慮期間内でも原則として撤回できません。詐欺・強迫など民法上の取消原因がある場合は別の手続と期限が問題になるため、直ちに専門家へ相談します。
相続放棄したことを債権者へどう示しますか
受理通知書の写しで足りるか債権者へ確認し、必要なら受理した家庭裁判所から相続放棄申述受理証明書を取得します。
関連する相続手続き
参考にした公式情報
- 裁判所「相続の放棄の申述」
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
- 裁判所「相続の放棄の申述書式・記載例」
- 裁判所「家事事件Q&A」
- 裁判所「熟慮期間に関する裁判例」
- e-Gov法令検索「民法」
- 国税庁「相続人の範囲と法定相続分」
- 裁判所「千葉県内の管轄区域表」
- 千葉家庭裁判所「松戸支部の窓口案内」
- 千葉家庭裁判所「松戸支部の所在地」
- 千葉家庭裁判所「郵便料及び予納金一覧」
- 千葉家庭裁判所「相続放棄・限定承認の申述の有無の照会」
- 千葉家庭裁判所「戸籍謄本等を提出される方へのご案内」
情報確認日:2026年9月12日
この記事は一般的な制度の説明です。期限の起算日、財産処分、受理後の有効性は個別事情で判断されます。最新の書式、郵便料、管轄、必要書類は提出前に家庭裁判所へ確認してください。