相続手続き100チェックリスト No.98。遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停で合意を目指し、不成立なら自動的に審判へ移行します。調停の管轄は相手方の一人の住所地等、審判を直接申し立てる場合は相続開始地等で異なります。申立て自体に短い一律期限はありませんが、具体的相続分の10年ルール、相続税の10か月、相続登記の3年を別々に管理します。
No.98 遺産分割調停・審判の基本情報
- 確認項目
- 内容
- 申立人
- 共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人
- 調停の申立先
- 相手方一人の住所地または合意した家庭裁判所
- 直接審判の申立先
- 相続開始地または合意した家庭裁判所
- 申立手数料
- 被相続人1人につき収入印紙1200円分
- 調停不成立
- 自動的に審判手続へ移行
- 10年ルール
- 具体的相続分を反映できる期間に注意
- 相続税
- 未分割でも原則10か月以内
- 4市の新規窓口
- 松戸支部受付係 047-313-9737
調停を申し立てても税務・登記の期限は止まらない
遺産分割調停・審判の10STEP
- 1
戸籍で相続人全員と遺言の有無を確認する
- 2
遺産・債務を調査して証拠資料をそろえる
- 3
財産評価、特別受益、寄与分の主張を整理する
- 4
希望する分割案と理由を具体化する
- 5
調停か直接審判かに応じて管轄を確認する
- 6
申立書、戸籍、財産資料を家庭裁判所へ提出する
- 7
相手方への送付と裁判所の照会へ対応する
- 8
調停期日で資料と希望を説明し合意を検討する
- 9
不成立なら審判で判断に必要な主張・証拠を出す
- 10
成立・確定後に登記、金融、税務を実行する
まず調停と審判の違いを確認する
裁判所の遺産分割調停案内によれば、調停では裁判官と調停委員で構成される調停委員会が当事者から事情や希望を聴き、資料の提出や必要に応じた鑑定などを通じて合意を目指します。裁判所が一方の勝ち負けを先に決める手続ではありません。
調停が不成立になると、自動的に審判手続が始まり、裁判官が提出資料、財産の種類・性質その他の事情を考慮して分割方法を定めます。裁判所の審判手続案内によれば、審判を直接申し立てても、話合いによる解決が適当な場合は調停へ付されることがあります。
対象者(申立人と相手方)
申立人は、共同相続人、包括受遺者または相続分の譲受人です。共同相続人の一人または数人が、ほかの共同相続人全員を相手方として申し立てます。一人でも相続人を漏らすと手続を進められないため、戸籍で相続関係を確定します。
調停と直接審判では申立先が違う
- 遺産分割調停:相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者全員が合意して定めた家庭裁判所
- 審判を最初から申し立てる場合:相続開始地(通常は被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意して定めた家庭裁判所
名古屋家庭裁判所の公式案内も、この管轄の違いを明示しています。調停では申立人本人の住所地や被相続人の最後の住所地だけで判断しないよう注意します。
申立て自体に短い一律期限はないが、10年ルールがある
遺産分割請求そのものが、被相続人の死亡から10年でできなくなるわけではありません。ただし、法務省の案内によれば、被相続人の死亡から10年を経過した後の遺産分割は、原則として、生前贈与などの特別受益や療養看護等の寄与分を反映した具体的相続分ではなく、法定相続分または指定相続分を基準に行います。
10年が近い場合は、期間内に家庭裁判所へ遺産分割を請求するなど、例外の要件を確認します。2023年4月1日より前に開始した相続にも新ルールは適用されますが、施行時から5年間の猶予期間などの経過措置があります。古い相続は死亡日だけで結論を出さず、弁護士へ確認してください。
調停中でも相続税の10か月期限は延びない
国税庁は、遺産が未分割でも相続税の申告・納税期限は延びず、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税すると案内しています。未分割財産は法定相続分または包括遺贈の割合に従って取得したものとして計算します。
未分割のため当初申告で配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できない場合、後日の適用を予定するなら、原則として当初申告へ「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。分割後に税額が減る場合の更正の請求は、原則として分割があったことを知った日の翌日から4か月以内です。調停・訴訟等で3年を超える場合の承認申請にも期限があるため、国税庁の要件を税理士と早めに確認します。
不動産の相続登記期限も別に管理する
法務省の相続登記案内に基づき、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内という基本的な申請義務を確認します。遺産分割が成立して不動産を取得した場合は、遺産分割成立日から3年以内にその内容を反映する登記も必要です。
調停や審判が長引いて基本的な相続登記ができないときは、相続人申告登記を含む対応を法務局・司法書士へ相談します。調停を申し立てただけで登記期限が止まるわけではありません。
申立費用
- 被相続人1人につき収入印紙1200円分
- 連絡用の郵便料(家庭裁判所ごとに指定)
- 戸籍、登記事項証明書、評価証明書、残高証明書等の取得費
- 必要に応じて不動産・株式等の鑑定費用
- 弁護士、税理士、司法書士等へ依頼する場合の報酬
郵便料は改定されることがあるため、松戸支部へ申し立てる場合は千葉家庭裁判所の最新一覧を申立直前に確認します。
全国共通の標準的な必要書類
- 申立書1通と相手方人数分の写し
- 事情説明書、進行に関する照会回答書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍附票
- 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書
- 預貯金通帳、残高証明書、取引履歴、有価証券資料
- 遺言書、既存の協議案、特別受益・寄与分を裏付ける資料
裁判所の全国共通案内では、申立前に入手できない戸籍等は申立後の追加提出でも差し支えないとされています。法定相続情報一覧図の写しを一部の戸籍に代えて提出できる場合もありますが、申立先に確認します。事件に応じて追加資料を求められます。
裁判所が遺産を探してくれるわけではない
京都家庭裁判所の遺産分割Q&Aは、遺産分割手続は遺産を探し出すことを目的とする手続ではなく、ほかの遺産があると主張する側が原則として裏付け資料を提出すると案内しています。預貯金、不動産、株式、保険、貸付金、債務などを申立前から調査し、一覧と証拠を整えます。
別の訴訟・手続が先に必要な場合がある
相続人であるか、遺言が有効か、特定財産が遺産に属するかなどに争いがある場合、別の訴訟等で前提問題を確定する必要が生じることがあります。葬儀費用、相続債務、使途不明金なども、当事者全員が調停で合意できれば一緒に解決できる場合がありますが、遺産分割審判で当然に判断されるとは限りません。
行方不明・未成年・判断能力が不十分な相続人
行方不明の相続人がいる場合はNo.95の不在者財産管理人、判断能力が不十分な相続人がいる場合はNo.96の成年後見等、親権者と未成年の子の利益が相反する場合はNo.97の特別代理人を検討します。必要な代理・管理体制がないまま本人を除外して合意することはできません。
調停成立後・審判確定後の手続
調停成立後は調停調書、審判確定後は審判書と確定証明書等を使い、相続登記、預貯金・証券の名義変更や払戻し、代償金の支払い、売却・引渡しを進めます。登記や金融機関の手続が自動で終わるわけではありません。
遺産分割審判に不服がある場合は、裁判所の即時抗告案内と審判書を確認し、原則として審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に、審判をした家庭裁判所へ即時抗告状を提出します。
野田市・柏市・流山市・松戸市の管轄・問い合わせ先
4市は千葉家庭裁判所松戸支部の管轄区域です。ただし、遺産分割調停は相手方の一人の住所地または合意した家庭裁判所、審判を最初から申し立てる場合は相続開始地(通常は被相続人の最後の住所地)を基準にします。申立人の住所だけでは決まりません。
所在地:〒271-8522 千葉県松戸市岩瀬無番地。新規の遺産分割調停・家事手続案内は受付係047-313-9737、手続中の調停は人訴・調停係047-313-0154です。審判を直接申し立てる場合や手続中の審判の担当番号、郵便料、提出部数は事前に受付係へ確認してください。確認日:2026-09-11。
自分で申し立てられるか
裁判所の書式・記載例を使って本人が申し立てることはできます。ただし、相続人や遺産の範囲、評価、特別受益、寄与分、使途不明金、遺言の効力などに争いがある場合は、弁護士への依頼を検討します。相続税は税理士、登記は司法書士と連携します。
注意点
- 管轄を混同しない:調停は相手方住所地等、直接審判は相続開始地等です。
- 相続人を漏らさない:ほかの共同相続人全員を相手方にします。
- 遺産調査を先にする:裁判所が未知の財産を探す手続ではありません。
- 10年を放置しない:特別受益・寄与分を反映できなくなる可能性があります。
- 税務・登記期限を別管理する:調停中でも自動延長されません。
- 審判後の2週間を見落とさない:即時抗告の期間は短いため送達日を記録します。
- 成立後の実行を忘れない:登記・金融・税務は別途手続が必要です。
よくある質問
自分の住所地の家庭裁判所へ申し立てられますか
調停は申立人ではなく相手方の一人の住所地が原則です。ただし、当事者全員が合意した家庭裁判所へ申し立てることもできます。
調停が不成立なら審判を改めて申し立てますか
通常は改めて申し立てる必要はなく、自動的に審判手続が開始されます。
死亡から10年を過ぎると遺産分割できませんか
遺産分割自体ができなくなるわけではありません。原則として、特別受益や寄与分を反映した具体的相続分ではなく、法定相続分または指定相続分を基準に分割するルールへ変わります。
調停中なら相続税の申告を待てますか
待てません。未分割でも原則10か月以内に申告・納税が必要です。分割見込書、分割後の修正申告・更正の請求、特例要件を税理士へ確認します。
調停成立後に不動産名義は自動で変わりますか
変わりません。調停調書等を使い、法務局へ相続登記を申請します。
関連する相続手続き
参考にした公式情報
- 裁判所「遺産分割調停」
- 裁判所「遺産分割調停の申立書式・記載例」
- 裁判所「審判手続一般」
- 名古屋家庭裁判所「遺産分割調停」
- 京都家庭裁判所「遺産分割Q&A」
- 裁判所「即時抗告」
- 法務省「遺産分割に関する新たなルールの導入」
- 法務省「不動産を相続した方へ」
- 法務省「相続登記の申請義務化」
- 国税庁「相続税の申告と納税」
- 国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」
- 国税庁「遺産分割が行われていない場合の各種特例」
- 裁判所「千葉県内の管轄区域表」
- 千葉家庭裁判所「松戸支部の窓口案内」
- 千葉家庭裁判所「松戸支部の所在地」
- 千葉家庭裁判所「郵便料及び予納金一覧」
情報確認日:2026年9月12日