相続手続き100チェックリスト No.100。限定承認は、相続財産の限度で故人の債務と遺贈を清算する制度です。原則3か月以内に、相続放棄者を除く共同相続人全員で、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ財産目録を付けて申述します。受理後は5日・10日以内の官報公告、債権者への催告、換価・弁済、みなし譲渡所得の検討が続くため、申述だけで終わらない点が重要です。
No.100 限定承認の基本情報
- 確認項目
- 内容
- 効果
- 相続財産の限度で債務・遺贈を清算
- 申述人
- 相続放棄者を除く共同相続人全員
- 期限
- 自己のために相続開始を知った時から原則3か月
- 申述先
- 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
- 申述手数料
- 被相続人1人につき収入印紙800円分
- 必須資料
- 申述書・財産目録・戸籍等
- 受理後
- 公告・催告・換価・弁済・税務
- 4市の窓口
- 松戸支部受付係 047-313-9737
受理で完了ではない|5日・10日以内に公告を始める
限定承認は、相続放棄者を除く共同相続人全員で申述し、受理後に相続財産を清算する制度です。
裁判所の公式Q&Aでは、相続人が1人なら限定承認後5日以内、複数なら選任された相続財産清算人が選任後10日以内に、限定承認と債権届出を求める官報公告を行うと案内しています。申述書を提出して終わりではありません。
含み益のある不動産や株式にはみなし譲渡所得が生じ、準確定申告が必要になる場合があります。申述前から弁護士と税理士へ相談し、清算費用と税額を試算します。
限定承認を進める10STEP
- 1
相続人と相続放棄者を戸籍・照会で確定する
- 2
財産・債務・保証・訴訟を至急調査する
- 3
遺産を処分せず固有財産と分けて保存する
- 4
単純承認・相続放棄・限定承認を比較する
- 5
共同相続人全員の意思と熟慮期間を確認する
- 6
含み益とみなし譲渡所得を事前に試算する
- 7
財産目録・申述書・戸籍等をそろえる
- 8
原則3か月以内に管轄家庭裁判所へ共同申述する
- 9
受理後5日または選任後10日以内に公告・催告する
- 10
債権届出を確認し換価・弁済・税務・残余処理を行う
限定承認とは
限定承認は、相続によって得た財産の限度で、被相続人の債務と遺贈を弁済する制度です。裁判所の公式案内では、債務の全体が分からず、清算後に財産が残る可能性がある場合などの選択肢とされています。
「プラスの財産だけを選んで相続する」制度ではありません。申述が受理された後に、官報公告、債権者への催告、財産の換価、弁済、税務申告を行い、清算後の残余があれば相続人が取得します。
対象者
相続財産と債務のどちらが多いか確定できず、相続放棄すると残したい財産も承継できない一方、単純承認では想定外の債務を固有財産で負担する危険がある相続人が検討します。
実務負担と費用が大きく、含み益のある不動産・株式、事業、保証債務、多数の債権者がある場合は、申述前に弁護士と税理士へ相談する必要性が高い手続です。
共同相続人全員で申述する
裁判所の家事事件Q&Aによれば、限定承認は共同相続人全員で行わなければならず、一部の相続人だけではできません。ただし、相続放棄した人は初めから相続人でなかったものと扱われるため、放棄した人を除く共同相続人全員で申述します。共同相続人が1人なら、その人が申述します。
1人でも協力しない場合や、既に遺産を処分して単純承認に当たる可能性がある場合は、選択できないことがあります。戸籍、遺言、先順位者の放棄の有無を確認し、全員の意思と期限を早期にそろえます。
期限は原則3か月
民法915条により、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に申述します。申述先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
財産調査が終わらず判断できない場合は、期限が終わる前に相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てます。申立てれば自動的に延長されるわけではなく、家庭裁判所が事情を考慮して判断します。共同相続人ごとに熟慮期間の起算日が異なる可能性があるため、全員について確認します。
財産目録と必要書類
標準的な書類は次のとおりです。申述には相続財産目録を付ける必要があるため、財産だけでなく債務と保証も調査し、評価基準日と根拠資料をそろえます。
- 限定承認申述書
- 相続財産目録
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人全員の戸籍
- 相続順位・代襲関係に応じた追加戸籍
- 預貯金、不動産、株式、動産、保険、事業資産等の資料
- 借入金、未払金、税金、保証債務、訴訟等の資料
全国共通案内では、同じ書類は1通で足り、申述前に入手できない戸籍等は申述後に追加提出できる場合があると案内されています。法定相続情報一覧図を利用できる場合もありますが、申述先へ確認してください。
費用
- 被相続人1人につき収入印紙800円分
- 家庭裁判所が指定する連絡用郵便料
- 戸籍、住民票除票、登記事項証明書、残高証明等の取得費
- 官報公告料
- 鑑定、換価、登記などの実費
- 弁護士、税理士、司法書士等へ依頼する場合の報酬
裁判所へ納める800円だけで清算全体が終わるわけではありません。財産の種類、債権者数、鑑定や売却の要否によって総費用は大きく変わります。
受理後の清算はすぐ始まる
相続人が1人の場合は限定承認者本人が清算を行います。共同相続人が複数の場合は、家庭裁判所が申述受理と同時に共同相続人の中から相続財産清算人を選任し、その人が清算を進めます。
裁判所の現行Q&Aでは、限定承認者は限定承認後5日以内、相続財産清算人は選任後10日以内に、限定承認をしたことと債権を届け出るよう求める官報公告を行うと案内しています。届出期間は民法927条により2か月以上とし、判明している相続債権者・受遺者には個別に催告します。
公告期間中は原則として弁済を拒み、期間後に優先権のある債権を確認し、残る債権を相続財産の割合に応じて弁済します。受遺者への弁済は相続債権者への弁済後です。一部の債権者だけを自己判断で優先すると損害賠償等の問題になり得ます。
相続財産の換価と先買権
弁済のために相続財産を売却する場合、民法上は原則として競売による換価が定められています。限定承認者が自宅などを残したい場合、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額を支払って競売を止める先買権の制度があります。
好きな金額で相続人が取得できる制度ではありません。鑑定費用、資金調達、担保権、譲渡所得・相続税、ほかの財産の清算見込みを一体で検討します。
みなし譲渡所得と準確定申告
限定承認により、土地・建物・株式など山林所得または譲渡所得の基因となる資産が移転すると、所得税法59条により相続開始時の時価で譲渡があったものとみなされる場合があります。通常の単純承認による相続と同じ税務処理ではありません。
含み益は被相続人の所得として計算し、申告が必要な場合は、国税庁の準確定申告案内に従い、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に申告・納税します。相続税の10か月期限とは別です。含み益が大きい不動産や株式がある場合は、限定承認を選ぶ前に税理士へ時価、取得費、必要経費、納税資金を試算してもらいます。
単純承認に注意する
相続財産の全部または一部を処分した場合や、熟慮期間内に限定承認・相続放棄をしなかった場合などは、民法921条の法定単純承認が問題になります。預金の払戻し、財産の売却・分配、債務の選択的な支払いを自己判断で行わず、相続財産と固有財産の口座・帳簿を分けます。
保存行為、葬儀費用、価値の低い動産の処分などは個別事情で評価が分かれる可能性があります。「少額だから大丈夫」と決めず、行動前に専門家へ確認して記録を残します。
自分でできるか
裁判所の書式・記載例を使って本人が申述すること自体は可能です。しかし、受理後の公告、催告、債権調査、換価、弁済、税務まで期限どおり適法に進める必要があり、相続放棄よりはるかに複雑です。
不動産、事業、保証債務、担保権、未確定債務、訴訟、多数の債権者、含み益がある場合は、原則として申述前から弁護士・税理士等と体制を整えることを勧めます。家庭裁判所の手続案内は書類・手順の説明であり、清算や税務の個別判断を代行するものではありません。
野田市・柏市・流山市・松戸市の申述先
被相続人の最後の住所が4市のいずれかなら、限定承認の申述先は千葉家庭裁判所松戸支部です。相続人が4市に住んでいるだけでは松戸支部の管轄になるとは限りません。
被相続人の最後の住所:野田市
千葉家庭裁判所 松戸支部
限定承認と熟慮期間伸長の申述・申立先です。相続人の住所や本籍ではなく、亡くなった方の最後の住所を基準にします。
被相続人の最後の住所:柏市
千葉家庭裁判所 松戸支部
限定承認と熟慮期間伸長の申述・申立先です。相続人の住所や本籍ではなく、亡くなった方の最後の住所を基準にします。
被相続人の最後の住所:流山市
千葉家庭裁判所 松戸支部
限定承認と熟慮期間伸長の申述・申立先です。相続人の住所や本籍ではなく、亡くなった方の最後の住所を基準にします。
被相続人の最後の住所:松戸市
千葉家庭裁判所 松戸支部
限定承認と熟慮期間伸長の申述・申立先です。相続人の住所や本籍ではなく、亡くなった方の最後の住所を基準にします。
所在地:〒271-8522 千葉県松戸市岩瀬無番地。新規申述・手続案内は受付係047-313-9737、手続中の事件は審判係047-313-0152です。郵便料と納付方法は最新の公式一覧で提出直前に確認してください。確認日:2026-09-11。
注意点
- 全員の共同申述:相続放棄者を除く共同相続人全員が必要です。
- 3か月の期限:財産目録の準備と並行して期間伸長も検討します。
- 申述だけで終わらない:受理直後から公告・催告・清算が始まります。
- 公告期限が短い:単独は5日以内、清算人は選任後10日以内です。
- 債権者を公平に扱う:担保・優先権と弁済順位を確認します。
- みなし譲渡を試算する:準確定申告は原則4か月以内です。
- 遺産を勝手に処分しない:単純承認の問題を避けます。
- 固有財産と分ける:専用口座・帳簿・証憑で管理します。
よくある質問
一人だけ限定承認できますか
共同相続人がいる場合はできません。相続放棄した人を除く共同相続人全員で行います。相続人が1人だけなら、その人が申述します。
限定承認なら借金を全く払わなくてよいですか
違います。相続財産の限度で債務と遺贈を清算します。相続人の固有財産まで原則として持ち出さないという制度です。
受理されたら家庭裁判所が清算してくれますか
家庭裁判所が自動的に債権者調査・公告・売却・弁済を代行するわけではありません。限定承認者または選任された相続財産清算人が法律に従って行います。
自宅は必ず残せますか
必ずではありません。先買権を利用できる可能性はありますが、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額、資金、担保権、税務などを満たす必要があります。
限定承認と相続税だけ考えればよいですか
いいえ。限定承認のみなし譲渡による被相続人の所得税と準確定申告が生じる可能性があります。相続税とは期限も計算も別です。
関連する相続手続き
参考にした公式情報
- 裁判所「相続の限定承認の申述」
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
- 裁判所「家事事件Q&A(限定承認)」
- 裁判所「限定承認の申述書式・記載例」
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「所得税法」
- 国税庁「納税者が死亡したときの確定申告」
- 国税庁「国外転出時課税制度FAQ Q44」
- 裁判所「千葉県内の管轄区域表」
- 千葉家庭裁判所「松戸支部の窓口案内」
- 千葉家庭裁判所「松戸支部の所在地」
- 千葉家庭裁判所「郵便料及び予納金一覧」
- 千葉家庭裁判所「戸籍謄本等を提出される方へのご案内」
情報確認日:2026年9月12日
この記事は一般的な制度の説明です。限定承認の可否、公告・弁済方法、税額は個別事情で変わります。最新の書式、郵便料、管轄、必要書類は申述先へ、清算は弁護士へ、税務は税理士・税務署へ確認してください。