相続手続き100チェックリスト No.96。相続人本人の判断能力が不十分で、遺産分割の意味や結果を理解して意思決定することが難しい場合は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ後見・保佐・補助開始を申し立てます。現行制度は3類型で、保佐人・補助人が遺産分割を代理するには権限の確認が必要です。候補者どおりに選任されるとは限らず、共同相続人なら利益相反にも注意します。
No.96 成年後見等開始の基本情報
- 確認項目
- 内容
- 対象
- 精神上の障害で判断能力が不十分な本人
- 現行類型
- 後見・保佐・補助の3種類
- 申立先
- 本人の住所地の家庭裁判所
- 開始手数料
- 収入印紙800円分
- 登記手数料
- 収入印紙2,600円分
- 判断資料
- 診断書・本人情報シート・財産資料
- 遺産分割
- 権限範囲と利益相反を確認
- 4市の窓口
- 松戸支部後見係 047-313-0153
相続の都合より本人の権利・意思・生活を優先する
成年後見制度は、遺産分割を早く終えるためだけではなく、判断能力が不十分な本人を継続的に保護・支援する制度です。
裁判所の案内に基づき、本人の判断能力、必要な権限、財産・生活状況を確認します。親族を候補者にしても、その人が必ず選任されるわけではありません。
保佐人・補助人は、選任されただけで遺産分割の代理権が当然に付くとは限りません。後見人等も共同相続人なら、特別代理人等が必要になる場合があります。
成年後見等を申し立てる10STEP
- 1
本人の判断能力と必要な相続行為を整理する
- 2
地域包括支援センター・専門家等へ相談する
- 3
福祉関係者へ本人情報シートを依頼する
- 4
医師へ家庭裁判所所定の診断書を依頼する
- 5
後見・保佐・補助と必要な権限を検討する
- 6
候補者・本人との利益相反を確認する
- 7
申立書・財産目録・収支資料等を準備する
- 8
本人の住所地の家庭裁判所へ提出する
- 9
調査・照会・必要な鑑定へ対応する
- 10
審判後に権限を確認し本人保護と相続手続きを進める
成年後見人等の選任を検討する場面
認知症、知的障害、精神障害などにより、相続人本人が遺産分割の意味や結果を理解し、有効に意思決定することが難しい場合です。身体が不自由、入院中、遠方に住んでいるという事情だけで、判断能力が十分な人に法定後見が必要になるわけではありません。
成年後見制度は相続手続きを早く終わらせるためだけの制度ではなく、本人の権利・意思・生活を継続的に守る制度です。制度利用の要否は、必要な法律行為と本人の判断能力を基に検討します。
2026年9月現在は後見・保佐・補助の3類型
法務省の法定後見制度Q&Aは、現在の3類型を次のように案内しています。
- 後見:判断能力が欠けているのが通常の状態
- 保佐:判断能力が著しく不十分
- 補助:判断能力が不十分
診断名や要介護度だけで区分を決めるものではありません。医師の診断書、本人情報シート、本人の意見、生活・財産状況等を基に家庭裁判所が判断します。
保佐人・補助人は選任だけで遺産分割を代理できるとは限らない
成年後見人は本人の財産に関する法律行為について広い代理権を持ちます。一方、保佐人・補助人の代理権は、家庭裁判所が審判で定めた特定の法律行為の範囲です。遺産分割を代理してもらうには、その行為を対象とする代理権付与の申立て・審判が必要になることがあります。
本人以外の申立てによる保佐人への代理権付与、補助開始、補助人への同意権・代理権付与には本人の同意が必要です。制度名だけでなく、今回必要な権限まで申立内容に含まれているか確認します。
申立人
裁判所の案内では、本人、配偶者、四親等内の親族、既に選任されている後見人等・監督人、検察官などが申立人として案内されています。法務省は市町村長による申立ても案内しています。親族による対応が難しい場合は、本人が住む市の成年後見担当窓口や地域包括支援センターへ相談します。
申立先
本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。今回亡くなった被相続人の最後の住所地、遺産の所在地、申立人の住所地ではありません。施設入所や長期入院がある場合は、生活の本拠と管轄を申立先へ確認します。
申立期限と相続手続きの期限
後見・保佐・補助開始の申立て自体に、死亡後何日以内という全国一律の期限はありません。ただし、相続放棄の熟慮期間、準確定申告、相続税申告、不動産の相続登記などには別の期限があります。後見申立てをしただけで他の期限が自動的に停止・延長されるわけではないため、並行して期限管理を行います。
標準的な必要書類
- 後見・保佐・補助開始の申立書、申立事情説明書
- 本人の戸籍謄本(発行から3か月以内)
- 本人の住民票または戸籍附票(発行から3か月以内)
- 候補者の住民票または戸籍附票(発行から3か月以内)
- 家庭裁判所所定の診断書(発行から3か月以内)
- 本人情報シートの写し
- 本人の健康状態に関する資料
- 後見登記等がされていないことの証明書
- 財産目録、収支予定表と預貯金・不動産・負債・収支の資料
- 親族関係図、親族の意見書、候補者事情説明書等
個人番号(マイナンバー)が記載された書類は提出しません。裁判所から追加書類を求められることがあります。最新の千葉家庭裁判所の申立書セットと提出先の案内を確認します。
診断書と本人情報シート
裁判所の後見ポータルでは、診断書作成の手引、診断書書式、本人情報シート作成の手引を公開しています。本人情報シートは、ケアマネジャー、ケースワーカー等、本人の生活状況を把握する福祉関係者に作成を依頼し、医師の診断と家庭裁判所の審理に活用されます。
本人情報シートを用意できないことだけで直ちに申立て不能になるとは限りません。主治医や申立先へ状況を説明し、必要資料を確認します。
費用
- 開始申立ての手数料:収入印紙800円分
- 後見登記手数料:収入印紙2,600円分
- 裁判所ごとに指定される郵便料
- 必要と判断された場合の鑑定費用
- 戸籍、住民票、登記事項証明書等の取得費
保佐開始と同時に代理権付与や同意権拡張を申し立てる場合、各申立てに別途800円が必要です。補助開始では同意権または代理権付与を同時に申し立てる必要があり、それぞれ別途800円が必要です。郵便料と納付方法は松戸支部へ確認します。
候補者を書いても必ず選ばれるわけではない
家庭裁判所は、本人の心身・生活・財産、必要な支援、親族関係、候補者の適格性や利害関係等を踏まえて選任します。親族を候補者としても、弁護士・司法書士・社会福祉士等の専門職、複数の後見人、後見監督人が選任される場合があります。
一定の財産や多額の入金予定がある場合などには、後見制度支援信託または後見制度支援預貯金の利用を検討することがあります。希望した候補者が選任されなかったことだけを理由とする不服申立てはできません。
申立てを簡単には取り下げられない
裁判所の家事事件Q&Aでは、申立てを取り下げるには家庭裁判所の許可が必要と案内しています。希望した親族が選ばれそうにない、専門職報酬がかかるという理由だけでは、本人保護の観点から取下げが許可されないことがあります。候補者、費用、制度が続く期間を申立前に確認します。
遺産分割と利益相反
成年後見人等は本人の利益を守る立場で遺産分割案を検討します。本人だけが不利益を受けないよう、原則として法定相続分の確保を基準に検討し、法定相続分を下回る案に合理的な理由があるか慎重に判断します。
成年後見人と本人が同じ相続の共同相続人なら、双方の取り分が対立する利益相反となります。裁判所の案内によれば、後見監督人がいない場合は特別代理人、保佐人・補助人の場合は権限に応じて臨時保佐人・臨時補助人を選任して、その人が本人を代理します。監督人が選任されている場合は、監督人が代理するため別の選任が不要になることがあります。
選任後に行うこと
- 審判内容と代理権・同意権の範囲を確認する
- 裁判所指定の期限までに財産目録・収支予定表等を提出する
- 本人財産と後見人等の個人財産を分けて管理する
- 本人の意思、心身、生活状況を踏まえて必要な契約・財産管理を行う
- 遺産分割案が本人の利益を害さないか確認する
- 利益相反があれば特別代理人等の選任へ進む
- 家庭裁判所へ定期報告し、重要な処分は事前に相談する
相続手続きが終わっても当然には終了しない
現行制度では、今回の遺産分割や名義変更が終わっただけで、後見・保佐・補助が当然に終了するわけではありません。本人の判断能力が回復して開始審判が取り消された場合や本人が死亡した場合など、法定の終了事由まで続きます。後見人等の辞任にも正当な事由と家庭裁判所の許可が必要です。
2026年公布の成年後見制度改正
法務省によると、2026年6月24日に改正法が公布され、後見・保佐を廃止して補助へ一元化し、本人に必要な範囲・期間で利用できる仕組みへの見直しが予定されています。
2026年9月11日現在、この成年後見制度改正はまだ施行されていません。施行日は公布から2年6か月以内の政令指定日です。現在の申立てには現行の後見・保佐・補助制度が適用されるため、将来制度を先取りして案内しません。申立時に施行状況を再確認してください。
野田市・柏市・流山市・松戸市の申立先
本人の住所地が4市のいずれかなら、後見・保佐・補助開始の申立先は千葉家庭裁判所松戸支部です。被相続人の最後の住所地や申立人の住所地では決まりません。
所在地:〒271-8522 千葉県松戸市岩瀬無番地。後見・保佐・補助の担当は後見係047-313-0153です。市役所は家庭裁判所への申立書提出先ではありませんが、親族による申立てが難しい場合の市長申立てや地域支援は各市の担当窓口へ相談します。郵便料と提出方法は申立前に確認してください。確認日:2026-09-11。
自分で申し立てられるか
親族が書式を使って申し立てることは可能です。ただし、本人の判断能力、必要な権限、財産調査、候補者、利益相反、相続期限が連動します。家庭裁判所は手続案内を行いますが、法律相談や遺産分割案の有利不利を判断する場所ではありません。必要に応じて司法書士・弁護士、地域包括支援センター、社会福祉協議会等へ相談します。
注意点
- 診断名だけで後見と決めない:判断能力と必要な支援から3類型を検討します。
- 保佐・補助の権限を確認する:選任だけで遺産分割代理権が当然に付くとは限りません。
- 候補者の確約と考えない:最終的に選ぶのは家庭裁判所です。
- 取下げを前提にしない:取下げには家庭裁判所の許可が必要です。
- 利益相反を見落とさない:後見人等も共同相続人なら別の代理人が必要になる場合があります。
- 相続完了で終了と思わない:現行制度は本人保護の必要が続く限り継続します。
- 未施行改正を適用しない:2026年公布の一元化は施行日を確認します。
よくある質問
認知症と診断されたら必ず後見ですか
診断名だけでは決まりません。本人の判断能力と必要な法律行為を個別に確認し、後見・保佐・補助または他の支援を検討します。
家族を成年後見人にできますか
候補者として記載できますが、家庭裁判所が本人に最も適切な人を選任するため、親族候補が選ばれるとは限りません。
保佐人や補助人も遺産分割できますか
代理権の範囲によります。遺産分割を対象とする代理権付与の審判が必要になることがあるため、審判書で権限を確認します。
遺産分割が終われば辞められますか
当然には終了しません。後見人等の辞任には正当な事由と家庭裁判所の許可が必要です。
後見人と本人が共同相続人ならどうしますか
利益相反となるため、監督人がいなければ特別代理人等の選任が必要になります。遺産分割協議書案を添えて家庭裁判所へ申し立てます。
関連する相続手続き
参考にした公式情報
- 裁判所「後見開始」
- 裁判所「成年後見制度の概要」
- 裁判所「診断書・本人情報シート」
- 裁判所「成年被後見人等の特別代理人等の選任」
- 法務省「法定後見制度」
- 法務省「制度利用の費用」
- 千葉家庭裁判所「成年後見制度」
- 千葉家庭裁判所「窓口案内」
- 法務省「成年後見及び遺言制度の見直し」
情報確認日:2026年9月11日