遺言で分け方が指定されていない遺産は、共同相続人全員で合意し、遺産分割協議書に「誰が・どの財産を取得するか」を特定して記載します。作成自体に一律の期限はありませんが、相続開始から10年後の分割ルール、相続税の原則10か月、相続登記の3年の期限に注意が必要です。相続人・財産を確定してから作成します。
遺産分割協議書に記載する主な内容
- 項目
- 記載のポイント
- 被相続人
- 氏名、死亡日、最後の住所、本籍など、誰の相続かを明確にします
- 不動産
- 登記事項証明書どおりに土地の所在・地番・地目・地積、建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積等を記載します
- 預貯金
- 金融機関名、支店名、預金種別、口座番号など、対象口座を特定できる情報を記載します
- 有価証券等
- 証券会社、口座、銘柄、数量などを資料に合わせて特定します
- 後から判明した財産
- 新たな財産が見つかった場合の帰属や再協議の方法を、全員の合意に基づいて定めます
- 署名・押印
- 提出先の要件を確認します。相続登記で使用する場合は全員が実印を押し、登記申請人以外の相続人の印鑑証明書を添付するのが法務局の案内です
書式より先に「全員」と「全財産」を確定する
相続人の一人を除外した協議や、重要な財産を誤って特定した協議書は、その後の手続を止める原因になります。遺言書、必要な戸籍、財産目録を先に確認し、共同相続人全員が参加できる状態にします。民法第907条は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合を除き、共同相続人が協議で遺産の全部または一部を分割できると定めています。条文はe-Gov法令検索「民法」で確認できます。
不動産の相続登記で協議書を使う場合、法務局の案内は相続人全員が印鑑証明書と同じ印を押す方法を示しています。ただし、登記申請人となる相続人の印鑑証明書は添付不要とされ、添付する印鑑証明書にも「発行後3か月以内」という制限はありません。金融機関などは別の有効期限を設けることがあるため、提出先ごとに確認します。法務局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」を確認してください。
遺産分割協議書を作る6つのSTEP
- 1
遺言書の有無と内容を確認し、遺産分割協議で決める範囲を整理する
- 2
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍等を集め、共同相続人を確定する
- 3
預貯金、不動産、有価証券、債務などを調査し、資料に基づく財産目録を作る
- 4
特別代理人等の要否を確認したうえで相続人全員が協議し、財産の取得者と条件を決める
- 5
被相続人・相続人・各財産を正確に特定して協議書を作り、全員が内容を最終確認する
- 6
各手続先の要件に合わせて署名・実印押印・印鑑証明書を整え、登記、預金払戻し、税務等へ使用する
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書は、共同相続人が遺産の分け方について合意した内容を証明する書面です。法律上決められた一つの全国共通様式があるわけではありませんが、相続登記、預金や証券の名義変更、相続税申告などで、合意内容と当事者を確認する資料として使われます。遺言で全財産の承継方法が定められている場合など、協議書が不要となることもあります。
誰が協議に参加するか
原則として共同相続人全員が参加します。遠方の相続人がいる場合でも、同じ場所に集まること自体が必須とは限らず、合意内容を共有して署名押印を回す方法などがあります。一方、未成年者とその親権者がともに相続人で利害が対立する場合などは、親権者が子を代理できず、家庭裁判所で特別代理人を選任する必要があります。裁判所は申立てに遺産分割協議書案等を求めています。裁判所「特別代理人選任」で確認してください。
参加する相続人を戸籍で確認する段階では、相続人調査に必要な戸籍と出生から死亡までの集め方を先に確認してください。
作成期限
遺産分割協議書の作成自体に、相続開始から何日以内という一律の法定期限はありません。ただし、2023年4月1日施行のルールにより、相続開始から10年を経過した後に家庭裁判所で行う遺産分割は、原則として特別受益や寄与分を考慮せず、法定相続分または指定相続分を基準に行います。10年経過後でも相続人全員の合意による分割は可能ですが、経過措置や例外もあるため、生前贈与・介護などを相続分へ反映したい場合は早めに協議または調停・審判の申立てを検討します。詳細は法務省「遺産分割に関する新たなルール」で確認できます。
相続税の申告が必要な場合、申告・納付は原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。未分割でも期限は延びず、民法上の相続分等に従っていったん申告・納税します。未分割では配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できない申告となる場合があります。不動産については、相続による取得を知った日から3年以内の基本的義務に加え、その後に遺産分割で取得した場合は成立日から3年以内に分割内容を踏まえた相続登記を申請する追加的義務があります。法務省「相続登記の申請義務化」を確認してください。
手続き先
協議書自体を役所へ届け出て成立させる手続ではありません。完成後は、対象財産に応じて法務局、金融機関、証券会社、運輸支局、税務署などへ提出します。不動産登記は不動産所在地を管轄する法務局、相続税申告は相続人の住所ではなく被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署が提出先です。親権者と未成年者の利益が相反して特別代理人が必要な場合は、子の住所地の家庭裁判所へ申し立てます。各機関が独自の書式や手続書類を求めることもあるため、協議書を確定する前に主な提出先の要件を確認します。
必要書類
作成前に確認する資料
- 遺言書と、検認が必要な場合は検認済みの資料
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍
- 相続人全員の現在戸籍、住所を確認できる書類
- 固定資産税通知書、登記事項証明書、残高証明書、取引報告書などの財産資料
- 借入金・未払金等の債務資料
署名押印時に用意する資料
- 完成した遺産分割協議書
- 提出先が求める相続人の印鑑登録証明書
- 各人の実印
- 本人確認や代理権を示す書類
実印・印鑑登録証明書は、法律上すべての遺産分割協議の成立要件として一律に定められているものではありません。一方、相続登記で使う協議書には全員が実印を押し、登記申請人以外の相続人の印鑑証明書を添付する方法が法務局から案内されています。この印鑑証明書に発行後3か月以内の制限はありません。ただし、金融機関などは独自の有効期限や所定用紙を定めることがあります。
不動産を記載する資料
登記事項証明書の表題部を確認し、住居表示ではなく地番・家屋番号等を正確に転記します。共有持分がある場合は持分も記載します。土地と建物を省略して「自宅」とだけ書くと、対象が特定できないおそれがあります。
費用
自分で協議書を作成すること自体に公的な手数料はありません。ただし、戸籍、住民票、印鑑登録証明書、登記事項証明書等の取得費、郵送費がかかります。専門家へ作成・登記・税務・紛争対応を依頼する場合は別途報酬が必要です。相続登記には原則として登録免許税もかかります。
書き方のポイント
- 冒頭で被相続人と相続開始日を特定する
- 共同相続人全員で協議し合意したことを記載する
- 財産ごとに取得者を明確にし、資料どおりの情報で特定する
- 代償金を定める場合は金額、支払期限、方法を明確にする
- 債務負担の合意は債権者との関係を当然に変更しない点に注意する
- ページが複数になる場合の一体性を確保し、訂正方法も全員で統一する
- 必要部数を確認し、通常は各相続人と提出先分の原本を用意する
自分でできるか
相続人と財産が少なく、全員の合意が明確で、提出先の要件を確認できる場合は自分で作成できます。法務局は相続登記に関する資料や記載例を公開しています。ただし、ウェブ上のひな型をそのまま使うのではなく、実際の登記・残高資料に合わせて財産を特定します。
専門家に相談した方がよいケース
- 未成年者、認知症の相続人、行方不明者、海外居住者がいる
- 遺言と協議内容の関係、遺留分、特別受益、寄与分に問題がある
- 不動産の共有、代償分割、換価分割、事業承継が含まれる
- 相続人間で合意できない、連絡を拒む人がいる
- 相続税の申告期限が迫っている、未分割申告や特例の適用判断が必要
- 債務を特定の相続人だけが負担する合意を予定している
合意済みの登記や書面作成は司法書士、税務は税理士、交渉や紛争は弁護士など、必要な業務に応じて相談先を選びます。
注意点
- 全員参加:相続人調査を終える前に確定版へ署名しません。
- 遺言の優先確認:協議対象にできる財産か、遺言執行者の権限があるかを確認します。
- 押印前確認:白紙や未完成の協議書に実印を押さず、全ページを確認します。
- 債務:相続人間の負担合意だけで債権者に対する責任が当然に変わるとは限りません。
- 後発財産:包括条項の意味を全員で理解し、重要財産は判明後に具体的に再協議することも検討します。
よくある質問
相続人全員が同じ日に集まる必要がありますか
同席自体が一律に必要というわけではありません。ただし、全員が同じ最終内容に合意したことを確認できる方法で署名押印します。
実印と印鑑証明書は必須ですか
協議の成立要件と提出先の要件を分けて考えます。相続登記や多くの金融機関手続では実印と印鑑証明書が求められるため、実務上は全員分を用意するのが一般的です。
後から財産が見つかったら協議書は無効ですか
直ちに全部が無効になるとは限りませんが、追加の協議が必要になることがあります。新たな財産の扱いを定めた条項の内容と、当初の合意への影響を確認します。
相続人が一人なら作成しますか
共同相続人間の遺産分割協議はありません。ただし、相続人が一人であることを示す戸籍等と、各手続先の書類は必要です。
10年を過ぎると遺産分割協議はできませんか
相続人全員が合意する協議は可能です。ただし、家庭裁判所での分割では原則として特別受益・寄与分を考慮した具体的相続分を使えなくなるため、10年を単なる目安として放置しないことが重要です。
協議が10か月以内に終わらないと相続税は申告できませんか
未分割でも申告期限は延びません。民法上の相続分等でいったん申告・納税し、分割後に修正申告または更正の請求を検討します。使えない特例があるため税理士へ早めに確認してください。
関連する相続手続き
野田市・柏市・流山市・松戸市の主な提出先
遺産分割協議書そのものを市役所へ提出する必要はありません。以下は、協議後に相続登記・相続税申告を行う場合、または未成年者の特別代理人が必要な場合の窓口です。相続税の管轄は被相続人の死亡時の住所、不動産登記の管轄は物件所在地、特別代理人の申立先は子の住所で判定します。
未成年者の特別代理人
子の住所が野田市・柏市・流山市・松戸市の場合は、千葉家庭裁判所 松戸支部が管轄です。申立て前の受付窓口は047-313-9737です。遺産分割協議書案などが必要になります。窓口案内
管轄・電話番号の確認日:2026-08-25。被相続人・子・不動産の所在地が4市以外の場合は、該当地域の公式管轄表で確認してください。
参考にした公式情報
- e-Gov法令検索「民法」第907条・第904条の3等
- 法務省「遺産分割に関する新たなルール」
- 法務局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」
- 法務省「相続登記の申請義務化」
- 裁判所「特別代理人選任」
- 国税庁「相続税の申告と納税」
- 国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」
- 千葉地方法務局「柏支局」
- 千葉地方法務局「松戸支局」
- 東京国税局「柏税務署」
- 東京国税局「松戸税務署」
- 裁判所「千葉県内の管轄区域表」
- 千葉家庭裁判所「松戸支部の窓口案内」
情報確認日:2026年9月12日
この記事は一般的な作成方法の説明です。財産の帰属、協議の有効性、税務・登記の扱いは個別事情で異なります。署名前に各提出先または専門家へ確認してください。