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故人の貸付金を相続|債権の分割・時効・回収と税務

期限
共通期限なし/返済期日・消滅時効を直ちに確認
手続き先
債務者・保証人/担保登記は不動産所在地の法務局

相続手続き100チェックリスト No.54。故人の貸付金は相続財産ですが、可分な貸金返還請求権は原則として法定相続分に応じて分割承継されます。証拠と死亡日時点の残高、時効、取得割合を確認し、債務者へ適切に通知して回収・税務処理を進めます。

No.54 貸付金で確認する6項目

確認項目
確認する内容
契約・証拠
借用書、振込、返済記録、メール、帳簿
死亡時残高
元本、既払額、利息、遅延損害金、充当
相続人・割合
法定相続分、遺言、遺産分割、対抗要件
消滅時効
契約日、弁済期、最後の返済、債務承認
債務者・保証人
住所、法人登記、支払能力、保証範囲
担保・税務
抵当権、管轄法務局、回収可能性、評価

「一人が全額請求できる」と決めつけない

可分な貸金債権は、原則として法定相続分に応じて各相続人へ分割承継されます。一人が全額取得する遺言・遺産分割等があっても、法定相続分を超える部分を債務者へ主張するには民法899条の2の通知等を確認します。

また、請求書の送付だけでは時効は更新せず、原則6か月の完成猶予にとどまります。期限が近いときは支払督促・訴訟等を早急に検討します。

故人の貸付金を整理・回収する9STEP

1

借用書・契約書・公正証書・帳簿を集める

2

貸付、贈与、立替金、返済済みのいずれかを証拠で区別する

3

死亡日時点の元本・利息・遅延額を再計算する

4

契約日・弁済期・最後の返済・債務承認から時効を確認する

5

法定相続分、遺言、遺産分割と債権の取得割合を整理する

6

債務者、保証人、支払能力、担保と登記を確認する

7

相続証明と取得割合を示して債務者へ正式に通知する

8

返済合意、支払督促、訴訟、担保実行等を選ぶ

9

入金・交渉・回収可能性と相続税資料を保存する

誰が必要か

亡くなった方が親族、知人、自身の会社、勤務先、取引先等に金銭を貸し、死亡時に未返済残高がある場合に相続人・受遺者・遺言執行者が確認します。帳簿上の「役員貸付金」「未収入金」も、実際の法律関係と回収可能性を調べます。

期限

死亡後何日以内という共通の届出期限はありません。しかし返済期日と消滅時効は死亡で止まりません。法務省の改正概要では、2020年4月1日施行後の一般的な債権は、権利を行使できると知った時から5年、権利を行使できる時から10年で時効消滅する制度です。施行前の契約等には経過措置・旧法が関係するため、契約日、弁済期、最後の返済、債務承認を専門家へ示します。

貸付金債権は相続財産

民法896条により、相続人は被相続人の一身に専属するものを除き、財産上の権利義務を承継します。故人が返済を受ける権利も相続対象です。借用書が見つからなくても直ちに権利がないとは限りませんが、贈与、立替金、預け金、既返済との区別を証拠で説明する必要があります。

可分な貸金債権は原則として法定相続分で分かれる

裁判所の裁判例が引用する最高裁判例では、貸金返還請求権のような可分債権は、原則として相続開始と同時に法定相続分に応じて各相続人へ分割承継されます。預貯金と同じ扱いとは限りません。共同相続人全員の合意で遺産分割の対象に含めることができる場合もありますが、単に「長男が全部回収する」と決めただけで債務者に全額請求できるとは限りません。

一人が全額を取得したときは債務者への対抗要件を確認

民法899条の2では、相続分を超える部分を遺言や遺産分割等で取得した場合、債権について所定の対抗要件を備えなければ債務者その他の第三者へ主張できません。取得した相続人は、共同相続人全員のために債務者へ通知し、その通知に取得割合を示す方法等を確認します。第三者との優劣が問題になる場合は確定日付のある証書も検討します。

必要書類・証拠と死亡日時点の残高を確定する

  • 借用書、金銭消費貸借契約書、公正証書、変更合意
  • 貸付時の振込明細、通帳、現金の受領書
  • 返済領収書、入金履歴、返済予定表
  • メール、メッセージ、会計帳簿、確定申告資料
  • 保証契約、抵当権設定契約、登記事項証明書

元本から返済済み額を引き、死亡日までの契約利息・遅延損害金を確認します。利率や計算方法が適法か、返済金を元本と利息のどちらへ充当したかでも残高が変わります。双方の認識を残高確認書等で文書化します。

債務者・保証人・担保を確認する

債務者の氏名・法人名、現住所、本店、連絡先、返済能力、保証人の範囲、担保の現状を確認します。法人なら登記事項証明書と決算資料、破産・再生等の手続の有無も調べます。抵当権等は被担保債権に伴って承継されますが、登記名義を相続人へ変更する手続が必要になるため、担保不動産所在地の法務局へ確認します。

債務者へ通知し、誤払いを防ぐ

故人の死亡、相続関係、各相続人の取得割合、今後の振込先を証明書類とともに通知します。遺言や遺産分割で一人が法定相続分を超えて取得する場合は、民法899条の2の対抗要件を確認します。故人名義口座の凍結後に入金が戻ることもあるため、支払方法を文書で合意します。

時効完成が近い場合

法務省の消滅時効資料によると、請求書を送る「催告」だけでは時効は更新せず、完成が6か月猶予されるにとどまります。その間に訴訟、支払督促等の手続を検討します。債務者による権利の承認は時効更新の対象ですが、どの言動が承認に当たるかは証拠と事情によります。催告を繰り返せば無期限に延びるわけではありません。

任意回収と裁判手続

残高に争いがなければ、一括・分割返済、振込先、期限、遅延時の扱いを合意書にします。債務者が支払わない場合、内容証明、民事調停、支払督促、訴訟、担保実行等を検討します。裁判所によると、支払督促は金銭等の給付請求を対象とし、原則として債務者の住所地を管轄する簡易裁判所へ申し立てます。債務者が異議を申し立てると、請求額に応じて訴訟へ移行します。

相続放棄を検討中なら回収・免除をしない

相続放棄を検討している段階で、貸付金を回収して使う、債務を免除する、返済条件を大きく変える等の処分をすると、法定単純承認との関係が問題になることがあります。裁判所の相続放棄案内を確認し、先に弁護士・司法書士へ相談します。

相続税上の評価

国税庁の財産評価基本通達204では、貸付金、売掛金、未収入金等は、原則として返済されるべき元本と課税時期現在の既経過利息の合計で評価します。通達205は、破産・再生等の一定状況や、回収が不可能・著しく困難と見込まれる部分を元本価額へ算入しない取扱いを定めています。

国税庁の税務訴訟資料でも、債務超過や延滞だけで直ちに回収不能とはならず、相続開始時の客観的事情から判断されています。「親族だから請求しにくい」「長く返済がない」だけでゼロ評価にせず、財務資料、交渉記録、倒産手続、担保価値等を税理士へ示します。

費用

債務者への通常の通知に共通の公的手数料はありません。戸籍・登記事項証明書、内容証明郵便、確定日付、公正証書、担保登記、裁判所の申立手数料・郵便料、専門家報酬等が必要に応じて発生します。

野田市・柏市・流山市・松戸市の管轄・問い合わせ先

無担保の貸付金は住所地の市役所へ届け出る手続きではなく、債務者・保証人が最初の連絡先です。支払督促は原則として債務者の住所地を管轄する簡易裁判所へ申し立てます。故人名義の抵当権等があるときだけ、担保不動産の所在地を管轄する法務局で登記を確認します。

野田市

債務者・保証人/担保不動産は千葉地方法務局柏支局

無担保の貸付金に市役所への届出はありません。故人が債権者として登記された抵当権等を承継する場合、担保不動産が野田市内なら柏支局へ確認します。

柏市

債務者・保証人/担保不動産は千葉地方法務局柏支局

請求・返済先変更の連絡先は債務者です。担保不動産が柏市内なら、抵当権の相続登記等は柏支局の管轄です。

流山市

債務者・保証人/担保不動産は千葉地方法務局松戸支局

市役所では貸付金の回収手続きを扱いません。担保不動産が流山市内なら、抵当権の相続登記等は松戸支局へ確認します。

松戸市

債務者・保証人/担保不動産は千葉地方法務局松戸支局

債務者への通知が先です。担保不動産が松戸市内なら、抵当権の相続登記等は松戸支局の管轄です。

管轄・電話番号の確認日:2026-08-31。債務者の所在地、担保不動産の所在地、請求方法によって窓口が変わります。

自分でできるか

証拠がそろい、債務者が残高を認め、各相続人の取得割合と通知方法が明確なら、任意の連絡・入金管理を本人で進められることがあります。法定相続分と異なる取得、時効直前、無担保の高額債権、法人債務者、担保登記がある場合は専門家確認を優先します。

専門家に相談した方がよいケース

  • 借用書がなく、貸付け・贈与・返済済みのいずれかで争いがある
  • 相続人の一人が全額取得し、債務者への対抗要件が必要
  • 消滅時効が近い、または既に援用された
  • 保証・抵当権・公正証書・複数債務者がある
  • 債務者が法人、債務超過、倒産手続中である
  • 相続税評価、準確定申告、相続後の利息課税が問題になる

注意点

  • 預金と同じ扱いにしない:可分な貸金債権は原則として法定相続分で分割承継されます。
  • 通知だけで時効更新と考えない:催告は原則6か月の完成猶予です。
  • 一人へ全額を振り込ませない:遺言・分割内容と対抗要件を確認します。
  • 借用書額を残高にしない:返済、利息、充当を再計算します。
  • 延滞だけでゼロ評価にしない:相続開始時の回収可能性を客観資料で判断します。
  • 放棄検討中は処分しない:回収・免除・条件変更前に相談します。

よくある質問

借用書がなくても請求できますか

契約の成立や残高を振込履歴、返済記録、メール、帳簿等で立証できる場合はあります。ただし贈与や立替金との区別が争われやすいため、証拠を時系列で整理します。

相続人の一人が全額を受け取れますか

可分な貸金債権は原則として法定相続分で分割承継されます。一人が全額取得する遺言・遺産分割等がある場合でも、法定相続分を超える部分を債務者へ主張するための通知等を確認します。

請求書を送り続ければ時効を止められますか

催告は原則として完成を6か月猶予する制度で、それ自体では時効更新になりません。時効が迫る場合は訴訟・支払督促等を弁護士へ相談します。

返済されていない貸付金も相続税がかかりますか

原則は元本と既経過利息で評価します。回収不能・著しく困難な部分を除外できるかは、相続開始時の倒産手続、財務状態、担保等の客観資料で判断します。

野田・柏・流山・松戸の市役所へ届けますか

貸付金そのものに市役所への届出はありません。債務者・保証人へ連絡し、担保不動産の登記がある場合だけ、その不動産所在地を管轄する柏支局または松戸支局へ確認します。

関連する相続手続き

参考にした公式情報

情報確認日:2026年9月12日

債権の帰属、時効、対抗要件、回収可能性、税務評価は契約日・証拠・相続方法・債務者の状態で結論が変わります。請求や免除の前に個別確認してください。