相続手続き100チェックリスト No.89。個人事業主が亡くなったら、故人の廃業・準確定申告と、後継者の開業・青色申告を分けて処理します。2026年から国税の開廃業届の期限が変わりましたが、青色申告、給与、インボイス、千葉県の個人事業税は別期限です。死亡日前後の帳簿と事業資産も区切って整理します。
No.89 個人事業の死亡・承継で確認する期限
- 手続き
- 現行の期限・要点
- 準確定申告
- 相続開始を知った日の翌日から4か月以内
- 故人の開廃業届
- 死亡した年分の所得税確定申告期限まで
- 後継者の開業届
- 開始した年分の所得税確定申告期限まで
- 青色申告
- 申告区分・死亡日・承継日により異なる
- 給与支払事務所
- 開設・移転・廃止から1か月以内
- インボイス死亡届
- 速やかに/みなし登録は最長4か月
- 千葉県の事業税
- 開始1か月/変更・廃止10日以内
「1か月」「4か月」だけで判断しない
2026年1月1日以後、国税の個人事業の開業・廃業等届出書は、その年分の所得税確定申告期限までです。e-Taxの改正案内と国税庁の現行案内で確認します。
一方、青色申告は死亡日等で期限が分かれ、給与支払事務所は1か月、インボイス死亡届は速やかに、千葉県の個人事業税は開始1か月・変更/廃止10日以内です。
個人事業の死亡・承継10STEP
- 1
事業を継ぐ人と承継日を決める
- 2
事業資産・債務・契約・許認可を棚卸しする
- 3
死亡日時点で故人と後継者の帳簿を区切る
- 4
故人の準確定申告と開廃業関係を整理する
- 5
後継者の開業届と青色申告期限を判定する
- 6
消費税・インボイスの死亡・登録手続きを行う
- 7
給与・源泉所得税・社会保険を切り替える
- 8
千葉県の個人事業税を県税事務所へ報告する
- 9
許認可・口座・決済・取引先契約を変更する
- 10
相続税申告と事業承継税制の適用を確認する
個人事業主が死亡したときに最初にすること
個人事業は法人と違い、事業主本人と別の法人格があるわけではありません。店舗名や屋号を同じにして営業を続けても、税務上は故人の所得計算を死亡日で区切り、事業を継ぐ相続人が自分名義で開業・青色申告・消費税・給与関係を判定します。
まず、誰が事業を継ぐか、いつから継ぐか、店舗・在庫・設備・売掛金・借入金・敷金・営業権・許認可・従業員を誰が引き継ぐかを整理します。事業を継ぐ人と事業用不動産の取得者が違う場合は、賃貸条件や設備の使用条件も遺産分割協議書等に残します。
誰が必要か
故人の事業を継ぐ相続人だけでなく、誰も事業を継がない場合も、相続人は故人側の準確定申告、開廃業届、青色申告の取りやめ、消費税・インボイス、給与支払事務所など該当する終了手続きを確認します。
事業を継ぐ相続人は、故人とは別に、自分の開業届、青色申告承認申請、給与・源泉所得税、消費税、インボイス登録等を判定します。故人の青色申告承認やインボイス登録番号が恒久的に自動承継されるわけではありません。
2026年から国税の開廃業届の期限が変わった
国税庁の2026年4月1日現在の案内では、「個人事業の開業・廃業等届出書」は、事業開始・廃止等があった日の属する年分の所得税の確定申告期限までです。e-Taxの公式案内が示す2026年1月1日以後の現行期限で、古い様式や自治体の古い案内に残る「1か月以内」と混同しないでください。
ただし、すべての届出が同じ期限へ変わったわけではありません。給与支払事務所の開設・移転・廃止届は1か月以内、インボイスの死亡届は速やかに、千葉県の個人事業税の開始報告は1か月以内、変更・廃止報告は10日以内です。
故人側の国税手続き
国税庁「廃業する場合」は、事業者が亡くなった場合の主な届出を次のように案内しています。
- 個人事業の開業・廃業等届出書:死亡した年分の所得税の確定申告期限まで
- 所得税の青色申告の取りやめ届出書:取りやめる年分の所得税の確定申告期限まで
- 準確定申告:相続開始を知った日の翌日から4か月以内
- 適格請求書発行事業者の死亡届出書:故人がインボイス発行事業者なら速やかに
- 個人事業者の死亡届出書:故人がインボイス発行事業者ではない消費税課税事業者なら速やかに
準確定申告と開廃業届は別書類で、期限の基準も異なります。所得税の確定申告期限は通常翌年3月15日ですが、休日や法令上の特例で変わることがあるため死亡年分の期限を確認します。
後継者側の国税手続き
事業を引き継ぐ相続人は、国税庁「開業する場合」を基に次を確認します。
- 個人事業の開業・廃業等届出書
- 所得税の青色申告承認申請書
- 青色事業専従者給与に関する届出書
- 棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 消費税課税事業者選択・簡易課税・課税期間等の届出
- 適格請求書発行事業者の登録申請書
必要な届出は、故人の申告状況、後継者が既に別事業をしているか、従業員を雇うか、課税売上高、インボイス登録の要否で変わります。開業届を出しただけで青色申告やインボイス登録が完了するわけではありません。
青色申告承認申請の期限
国税庁 No.2070では、相続による承継時の期限を故人の申告区分と死亡時期で分けています。
- 故人が白色申告:その年1月16日以後に承継した場合は、承継日から2か月以内
- 故人が青色・死亡日が1月1日〜8月31日:死亡日から4か月以内
- 故人が青色・死亡日が9月1日〜10月31日:その年12月31日まで
- 故人が青色・死亡日が11月1日〜12月31日:翌年2月15日まで
後継者が相続前から別の業務をしていた場合などは原則期限との関係が問題になります。「相続なら一律4か月」と決めつけず、死亡日、承継日、故人と後継者の青色承認状況を所轄税務署または税理士へ示して確認してください。
インボイス登録は4か月のみなし期間に注意
故人がインボイス発行事業者なら、相続人は適格請求書発行事業者の死亡届出書を速やかに提出します。e-Taxの公式案内では、故人の登録は原則として、死亡届出書を提出した日の翌日または死亡日の翌日から4か月を経過する日のいずれか早い日に失効します。
事業を承継した相続人は、相続の翌日から、自分の登録日の前日または死亡日の翌日から4か月を経過する日のいずれか早い日まで、インボイス発行事業者とみなされ、故人の登録番号を使う取扱いがあります。みなし期間後もインボイスを交付するなら、後継者自身の登録申請が必要です。
請求書の発行者名、振込口座、登録番号、取引先への通知を承継日と登録日で切り替えます。死亡届の提出だけで後継者の恒久的な登録が完了するわけではありません。
消費税はNo.90と分けて判定する
故人が消費税の課税事業者なら、死亡年分の消費税・地方消費税の申告を所得税の準確定申告と別に確認します。課税事業者・簡易課税・課税期間の選択、インボイス登録、事業用資産の取扱いにより必要書類が変わります。
国税庁 No.6603は通常の事業廃止時の消費税届出を案内していますが、死亡時は死亡専用の案内に従い、インボイス発行事業者ならインボイス死亡届、それ以外の消費税課税事業者なら個人事業者の死亡届を使います。
従業員・給与・源泉所得税
故人が従業員へ給与を支払っていた場合、故人側の給与支払事務所の廃止と、後継者側の開設を区別します。国税庁の提出期限は、開設・移転・廃止の事実があった日から1か月以内です。
未払給与、退職・再雇用の扱い、源泉徴収票、年末調整、住民税特別徴収、労働保険・社会保険は税務署の届出だけでは終わりません。雇用を継続する場合も、使用者が故人から後継者へ変わる契約関係を社会保険労務士や各行政機関へ確認します。
死亡日前後で帳簿を区切る
故人の事業所得は死亡日まで、後継者の事業所得は承継後を基本に区分します。ただし、売上・仕入・経費の計上時期は単純な入出金日だけでは決まりません。発生日、引渡日、契約内容、会計処理を確認します。
現金、預金、売掛金、買掛金、棚卸資産、減価償却資産、借入金、敷金、未払給与、預り源泉所得税を死亡日時点で一覧化します。事業用資産を誰が相続したかを遺産分割と一致させ、故人と後継者の帳簿へ二重計上しないよう固定資産台帳と開始残高を作ります。
請求書、領収書、契約書、通帳、総勘定元帳、確定申告書、青色申告決算書、消費税申告書、インボイス登録通知書、給与台帳を保存します。故人のクラウド会計やオンラインバンキングへ無断でログインせず、各サービスの死亡・承継手続に従います。
千葉県の個人事業税の届出
千葉県では、「個人の事業の開始等の報告書」を、事務所・事業所を管轄する県税事務所へ提出します。後継者の事業開始は開始日から1か月以内、内容変更や廃止は変更・廃止日から10日以内です。国税の開廃業届とは期限も提出先も違います。
年の中途で死亡により事業を廃止した場合の個人事業税の申告は4か月以内です。ただし、所得税の確定申告書または住民税申告書を提出した人は個人事業税の申告をしたものとみなされる案内があります。個別の提出要否を県税事務所へ確認します。
許認可・契約・口座は別手続き
飲食、建設、運送、古物、酒類、医療、士業などは、相続による承継制度の有無、届出期限、欠格事由が業法ごとに異なります。税務署へ開業届を出しても営業許可は自動承継されません。営業を続ける前に許認可を所管する官公署へ確認します。
賃貸借、借入金、リース、保険、電話、ドメイン、決済端末、ECモール、仕入先契約、屋号口座も各契約先へ死亡・承継を連絡します。故人名義の口座や決済アカウントを使い続けないよう、入金先と請求名義を切り替えます。
個人版事業承継税制を検討する場合
国税庁 No.4153では、一定の特例事業相続人等が青色申告に係る事業の特定事業用資産を取得して事業を継続する場合、相続税の納税猶予・免除を受けられる制度を案内しています。
対象となる相続・遺贈は2028年12月31日まで、個人事業承継計画の提出期限は2028年9月30日までです。青色申告、計画確認、経営承継円滑化法の認定、対象資産、事業継続など要件が多く、小規模宅地等の特例との適用関係もあります。遺産分割や処分前に税理士と都道府県窓口へ相談します。
野田市・柏市・流山市・松戸市の管轄・問い合わせ先
国税の届出は故人または後継者の納税地、千葉県の「個人の事業の開始等の報告書」は事務所・事業所の所在地を基準に管轄を確認します。
国税は、納税地が野田市・柏市なら柏税務署、流山市・松戸市なら松戸税務署です。個人事業税は、事業所が野田市・柏市なら柏県税事務所、流山市・松戸市なら松戸県税事務所です。所得税と県税で提出期限・提出先が異なります。確認日:2026-09-10。
必要書類
- 故人と後継者の各種届出書・申請書
- 故人の確定申告書、青色申告決算書、消費税申告書
- 総勘定元帳、現金出納帳、売掛・買掛台帳、給与台帳
- 預金通帳、請求書、領収書、契約書
- 棚卸表、固定資産台帳、借入・リース資料
- インボイス登録通知書、電子申告の受信通知
- 許認可証、賃貸借契約、雇用・社会保険資料
- 戸籍、遺言書、遺産分割協議書など承継関係資料
提出書類は事業内容と届出によって異なります。マイナンバーを含む税務資料をメールや共有フォルダへ置く場合は、アクセス制限と保存期限を設定します。
費用
税務署・県税事務所への届出自体に通常の申請手数料はありません。戸籍・証明書、郵送、会計ソフト、許認可変更、契約名義変更、税理士・社会保険労務士・行政書士等への報酬が別途かかります。申告により所得税、消費税、個人事業税、相続税等が生じることがあります。
自分でできるか
従業員・許認可・消費税がなく、帳簿が完成し、承継資産も明確な小規模事業なら本人対応できる場合があります。ただし、青色申告とインボイスには短い期限があり、遺産分割、準確定申告、消費税、相続税が連動するため、期限表を作って進めます。
専門家に相談した方がよいケース
- 青色申告の申請期限が迫っている
- 故人が消費税課税事業者・インボイス発行事業者だった
- 従業員、源泉所得税、社会保険がある
- 帳簿が未完成または事業口座と家計が混在している
- 店舗、不動産、在庫、借入、営業権を複数相続人で分ける
- 許認可事業を死亡後も休まず継続する
- 個人版事業承継税制や小規模宅地等の特例を検討する
- 相続放棄または限定承認を検討している
注意点
- 期限を一括りにしない:国税の開廃業届、青色、給与、インボイス、県税で期限が違います。
- 古い1か月情報:国税の開廃業届は2026年1月1日以後の現行期限を確認します。
- 青色は自動承継しない:死亡時期と申告区分で申請期限が変わります。
- インボイスは4か月:みなし期間後も必要なら後継者が登録申請します。
- 帳簿を分ける:死亡日前後の収入・経費・資産を二重計上しません。
- 営業許可は別:税務届出だけで営業継続できるとは限りません。
よくある質問
国税の開業届は承継後1か月以内ですか
2026年1月1日以後の現行制度では、個人事業の開業・廃業等届出書は、事実があった年分の所得税確定申告期限までです。ただし、給与支払事務所の届出や千葉県の開始報告は1か月以内なので混同しないでください。
故人が青色申告なら後継者も自動的に青色ですか
自動承継されません。後継者名義の青色申告承認申請書が必要です。故人の申告区分と死亡日・承継日により期限が変わります。
故人のインボイス番号をそのまま使えますか
相続によるみなし登録期間には故人の番号を使う取扱いがありますが、最長でも死亡日の翌日から4か月を経過する日までです。その後も必要なら後継者自身の登録を受けます。
事業を継がなくても手続きが必要ですか
必要です。故人の準確定申告、開廃業、青色申告の取りやめ、消費税・インボイス、給与関係、千葉県の廃止報告など該当するものを確認します。
店舗の屋号は同じままでよいですか
同じ屋号を使える場合でも、事業者、口座、契約、請求書、インボイスの名義は後継者へ切り替えます。商標や第三者の権利も確認してください。
市役所にも開業届を出しますか
この記事で扱う国税の届出先は税務署、千葉県の個人事業税の報告先は県税事務所です。許認可、住民税特別徴収、業種固有の手続きは市役所等が窓口になる場合があります。
関連する相続手続き
- No.2 法定相続人を確認する
- No.3 相続財産を調査する
- No.4 遺産分割協議書を作成する
- No.99 相続放棄を検討する
- No.88 準確定申告
- No.90 消費税の届出・申告
- No.91 相続税申告
- No.92 故人役員と法人の貸付金・借入金
- No.93 非上場株式の相続
参考にした公式情報
- 国税庁「廃業する場合」
- 国税庁「開業する場合」
- 国税庁「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁「青色申告制度」
- 国税庁「納税者が死亡したときの確定申告」
- 国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
- 国税庁「適格請求書発行事業者の死亡届出手続」
- e-Tax「相続時のインボイス登録の取扱い」
- 国税庁「個人版事業承継税制」
- 千葉県「個人の事業税」
- 千葉県「県税事務所」
- 東京国税局「柏税務署」
- 東京国税局「松戸税務署」
情報確認日:2026年9月10日
提出要否、期限、所得・消費税の帰属、事業用資産の相続税評価、許認可の承継は個別事情で変わります。故人と後継者の前年申告書、死亡日、承継日、事業内容を示して、各官公署または専門家へ最新情報を確認してください。