相続手続き100チェックリスト No.95。遺言執行者の指定がない、または指定された人の死亡・辞退等で執行者がいない場合、相続人・受遺者・債権者等の利害関係人は家庭裁判所へ選任を申し立てられます。申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所、費用は執行対象の遺言書1通につき収入印紙800円分と郵便料です。候補者の欠格事由と就任意思を確認し、選任後は通知・財産目録・遺言執行を進めます。
No.95 遺言執行者選任の基本情報
- 確認項目
- 内容
- 必要な場合
- 指定がない・死亡や辞退等で執行者が不在
- 申立人
- 相続人・受遺者・債権者等の利害関係人
- 申立先
- 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
- 印紙
- 執行対象の遺言書1通につき800円分
- 候補者資料
- 住民票または戸籍附票
- 欠格事由
- 未成年者・破産者は就任不可
- 選任後
- 通知・財産目録・遺言内容の実現
- 4市の申立先
- 千葉家庭裁判所松戸支部
相続人の話合いだけで遺言執行者の権限は生まれない
遺言による指定等がなく、遺言執行者としての権限が必要なら、利害関係人が家庭裁判所へ選任を申し立てます。
裁判所の案内で、申立人、申立先、費用、標準的な添付書類を確認できます。候補者を書いてもその人が必ず選任されるとは限りません。
選任前に、遺言で指定された人や指定を委託された第三者がいないか、指定された人が死亡・辞退・辞任・解任となっていないかを確認します。
遺言執行者を選任する9STEP
- 1
遺言書と検認の要否・完了状況を確認する
- 2
指定執行者と第三者指定の有無を確認する
- 3
就任意思・死亡・辞退・辞任等を確認する
- 4
執行すべき遺言事項と対象財産を整理する
- 5
候補者の意思・欠格事由・利害関係を確認する
- 6
申立書・戸籍・候補者資料等を準備する
- 7
遺言者の最後の住所地の家庭裁判所へ申し立てる
- 8
裁判所の照会・呼出し・追加資料へ対応する
- 9
選任後に通知・財産目録・遺言執行を進める
遺言執行者とは
遺言の内容を実現する人です。民法1012条は、遺言執行者に、遺言の内容を実現するための相続財産管理その他の必要な行為をする権利義務を定めています。遺言執行者がいる場合の遺贈の履行は、原則として遺言執行者だけが行います。
権限は遺言の内容と対象財産の範囲内です。遺言に書かれていない財産の分け方を遺言執行者が自由に決めたり、相続人間の争いを一方的に解決したりできる制度ではありません。
最初に「すでに執行者がいるか」を確認する
遺言書に特定の人が指定されているか、遺言執行者を指定する第三者が定められているかを確認します。民法1006条は、遺言者が遺言で一人または数人を指定する方法と、指定を第三者へ委託する方法を認めています。
指定された人が就任するか回答していないときは、相続人その他の利害関係人が相当の期間を定めて回答を求めることができます。期間内に相続人へ回答しないときは、民法1008条により就任を承諾したものとみなされます。選任申立てへ進む前に、指定、就任意思、死亡、辞退、辞任、解任の有無を記録で確認します。
家庭裁判所へ選任を申し立てる場合
裁判所の公式案内では、遺言で遺言執行者が指定されていないとき、または遺言執行者がいなくなったときに、家庭裁判所が申立てにより選任できると案内しています。
- 遺言書に遺言執行者の指定がない
- 指定された人が遺言者より先に死亡している
- 指定された人が就任を辞退した
- 就任後に死亡し、後任がいない
- 辞任許可または解任により執行者がいなくなった
- 第三者へ指定を委託したが、指定が行われない
遺言書があるだけで、すべての案件に遺言執行者が必要になるわけではありません。遺言事項の内容、金融機関・法務局等の手続要件、相続人の協力状況を確認し、選任が必要かを整理します。
申立人
申立てができるのは利害関係人です。裁判所は、相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた人などを例示しています。親族であることだけでなく、遺言の実現についてどのような利害があるかを申立書と資料で示します。
申立期限
選任申立てについて、死亡後何日以内という全国一律の短い法定期限は定められていません。ただし、預貯金の管理、遺贈、不動産登記、株式手続き、相続税申告などが止まることがあります。必要と分かったら早めに申し立て、別の期限がある手続きは並行して管理します。
申立先
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。相続人、申立人、候補者の住所地ではありません。最後の住所は住民票除票や戸籍附票等で確認します。
費用
- 執行の対象となる遺言書1通につき収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手または裁判所が案内する郵便料
- 戸籍、住民票、戸籍附票等の取得費
- 選任後の遺言執行に必要な実費・報酬
郵便料と納付方法は裁判所ごとに異なります。収入印紙800円を申立人の人数で計算するのではなく、執行対象の遺言書の通数で計算します。
標準的な必要書類
- 遺言執行者選任申立書
- 遺言者の死亡の記載がある戸籍・除籍・改製原戸籍
- 遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票
- 遺言書の写し、または遺言書検認調書謄本の写し
- 申立人の利害関係を証する資料(親族なら戸籍等)
同じ家庭裁判所に検認事件の記録が保存されている場合、検認から5年間は、遺言者の死亡記載のある戸籍と遺言書写し等の添付が不要と案内されています。入手できない戸籍等は申立後に追加提出できる場合がありますが、裁判所から追加資料を求められることもあります。
候補者を決めるときの注意
民法1009条により、未成年者と破産者は遺言執行者になれません。相続人や受遺者であることだけで当然に欠格となるわけではありませんが、利害対立、財産の複雑さ、執行量、中立性、専門知識、健康状態、就任意思を確認します。
申立書へ候補者を書いても、その人が必ず選任されるとは限りません。家事事件手続法は、家庭裁判所が選任の審判をする場合、遺言執行者となるべき人の意見を聴くことを定めています。裁判所は書面照会や事情聴取を行うことがあります。
申立てから選任まで
- 遺言書と検認の要否・完了状況を確認します。
- 指定済み執行者の有無と就任可否を確認します。
- 遺言事項と対象財産を一覧化します。
- 候補者の就任意思、欠格事由、利害関係を確認します。
- 申立書と添付書類を準備して家庭裁判所へ提出します。
- 裁判所の照会、呼出し、追加資料の依頼へ対応します。
- 選任審判の内容と効力を確認し、執行へ進みます。
選任後の主な仕事
民法1007条により、就任を承諾した遺言執行者は直ちに任務を行い、任務開始後は遅滞なく遺言内容を相続人へ通知します。さらに民法1011条により、遅滞なく相続財産目録を作成して相続人へ交付します。
- 相続人へ遺言内容と任務開始を通知する
- 対象財産を調査し、財産目録を作成・交付する
- 預貯金、証券、不動産等を管理する
- 遺贈、名義変更、登記その他の遺言事項を実行する
- 入出金、郵送、専門家費用、完了書類を保存する
- 任務終了時に引継ぎ・報告を行う
相続人から請求された場合、財産目録は相続人の立会いで作成するか、公証人に作成させます。遺言執行者がいる間、相続人は相続財産を処分するなど遺言執行を妨げる行為をできません。ただし、第三者や債権者との関係には民法1013条の例外があるため、個別の処分の効力は専門家に確認します。
報酬・費用
遺言に報酬の定めがあればその内容を確認します。定めがない場合、民法1018条により、家庭裁判所は相続財産の状況その他の事情を考慮して報酬を定めることができます。専門家を候補者とする場合は、選任前後に報酬、実費、税、支払時期、追加業務の範囲を確認します。
辞任・解任は選任と別の手続き
就任後に自由な意思表示だけで辞任できるわけではありません。民法1019条は、正当な事由がある場合に家庭裁判所の許可を得て辞任できると定めています。任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人が家庭裁判所へ解任を請求できます。現在の執行者に問題がある案件は、単なる後任選任だけでなく辞任許可・解任・職務停止等の手続きを検討します。
遺言書の検認との違い
検認は遺言書の状態を確認して偽造・変造を防ぐ手続きで、遺言執行者を選ぶ手続きではありません。自宅等で見つけた自筆証書遺言は、先に検認が必要な場合があります。公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要です。
2026年公布の遺言制度改正
法務省によると、電子データ等で作成し法務局で保管する保管証書遺言の創設や押印要件の見直しを含む改正法が2026年6月24日に公布されました。2026年9月11日現在、これらの遺言制度改正はまだ施行されていません。現在の選任申立ては現行の民法・家事事件手続法と裁判所案内で確認し、将来の制度を先取りしないでください。
野田市・柏市・流山市・松戸市の申立先
遺言者の最後の住所が4市のいずれかなら、遺言執行者選任の申立先は千葉家庭裁判所松戸支部です。申立人や候補者の住所では決まりません。
所在地:〒271-8522 千葉県松戸市岩瀬無番地。新規申立ては受付係047-313-9737、申立て後の事件は審判係047-313-0152です。市役所では選任申立てを受け付けません。郵便料と提出方法は申立前に確認してください。確認日:2026-09-11。
自分で申立てできるか
遺言の内容が明確で、候補者に争いがなく、相続関係と財産が単純なら本人申立ても可能です。裁判所の手続案内と記載例を使用し、不足書類は担当係へ確認します。
専門家に相談した方がよいケース
- 複数の遺言書があり内容が矛盾する
- 遺言の有効性、解釈、遺留分をめぐる争いがある
- 相続人または受遺者を候補者とすることに反対がある
- 未成年者、行方不明者、海外在住者が関係する
- 不動産売却、会社株式、事業、海外資産がある
- 現執行者の辞任・解任・職務停止が必要になる
- 相続税申告や登記など別手続きの期限が迫る
よくある質問
相続人の一人を候補者にできますか
相続人であることだけで欠格にはなりません。ただし、利害対立や事案の複雑さを含めて裁判所が適任性を判断するため、候補者どおりに選任されるとは限りません。
選任申立てに期限はありますか
全国一律の短い法定期限はありませんが、遺言執行や財産管理が止まるため、必要と判明したら早めに進めます。
検認が終われば遺言執行者も決まりますか
決まりません。検認と選任申立ては別の家庭裁判所手続きです。
候補者の住民票は必要ですか
裁判所が案内する標準的な添付書類は、候補者の住民票または戸籍附票です。申立先から追加資料を求められることがあります。
遺言執行者を家族の話合いだけで決められますか
遺言による指定等がなく、民法上の遺言執行者としての権限が必要なら、利害関係人が家庭裁判所へ選任を申し立てます。
関連する相続手続き
参考にした公式情報
- 裁判所「遺言執行者の選任」
- 裁判所「遺言執行者の選任の申立書」
- 裁判所「千葉県内の管轄区域表」
- 千葉家庭裁判所「窓口案内」
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「家事事件手続法」
- 法務省「民法等の一部を改正する法律」
情報確認日:2026年9月11日