相続手続き100チェックリスト No.86。相続不動産に古い買戻特約が残っている場合、売買契約の日から10年を経過していれば、登記権利者が単独で抹消申請できます。買戻権者の所在不明証明や同意は、この69条の2による申請には不要です。相続登記・住所変更登記の完了状況と対象不動産を先に確認します。
No.86 買戻特約抹消の期限・費用・申請先
- 確認項目
- 要点
- 69条の2
- 契約日から10年経過後は登記権利者が単独申請可能
- 相手方の同意
- 69条の2による申請では不要
- 所在不明の証明
- 69条の2による申請では不要
- 10年未満
- 共同申請または要件を満たす別制度を検討
- 登録免許税
- 原則、不動産1個につき1,000円
- 申請先
- 対象不動産所在地を管轄する法務局
10年は相続日ではなく、売買契約の日から数える
不動産登記法69条の2の基準は、登記の受付日や相続日ではなく売買契約の日です。契約日から10年経過後は、登記権利者が単独で買戻特約を抹消できます。
登記上の買戻期間が10年未満で先に満了していても、69条の2の単独申請は10年経過が必要です。10年未満は共同申請、または所在不明等の要件を満たす別制度を確認します。
買戻特約を抹消する9STEP
- 1
最新の登記事項証明書で買戻特約と対象権利を確認する
- 2
売買契約日・買戻期間・買戻権者・対象不動産を確認する
- 3
相続登記と住所・氏名変更登記の完了状況を確認する
- 4
売買契約の日から10年を経過しているか計算する
- 5
69条の2・共同申請・別制度のどれを使うか判断する
- 6
申請書・委任状など必要な申請情報と添付情報を準備する
- 7
不動産の個数を確認して登録免許税を計算する
- 8
対象不動産所在地を管轄する法務局へ申請する
- 9
完了後の登記事項証明書で全対象の抹消を確認する
買戻特約とは
買戻特約は、不動産の売主が売買契約と同時にした特約により、一定の要件の下で売買を解除して不動産を買い戻せる制度です。民法579条から585条に定められ、売買契約と同時に登記すれば第三者へ対抗できます。
所有権の売買に付いた買戻特約は、通常、所有権移転登記に付記して権利部(甲区)へ記録されます。ただし、地上権など所有権以外の権利の売買にも準用されるため、対象によっては乙区に記録されます。甲区だけと決めつけず、登記事項証明書の権利部全体を確認します。
誰が確認すべきか
相続した不動産・権利の登記事項証明書に「買戻特約」が残っている相続人です。自治体、公社、旧住宅供給機関などから分譲された土地で古い記録が見つかることがあります。抵当権、所有権移転請求権仮登記、譲渡制限などとは別の登記です。
売却、贈与、担保設定を予定している場合は、契約前に抹消の可否と所要期間を確認します。登記が残ったままでも直ちに実体上の買戻権が存続しているとは限りませんが、買主や金融機関の権利調査に影響します。
契約日から10年経過後の単独抹消
不動産登記法69条の2により、買戻しの特約に関する登記があり、契約の日から10年を経過したときは、登記権利者が単独でその登記の抹消を申請できます。2023年4月1日に施行された簡略化制度です。
この方法では、買戻権者の同意、所在不明の証明、公示催告・除権決定は69条の2自体の要件ではありません。不動産登記令7条3項1号により登記原因証明情報の提供も不要で、申請情報の登記原因は「不動産登記法第69条の2の規定による抹消」とし、原因日付を記載しない取扱いです。登記完了後、登記官から旧買戻権者へ完了通知がされます。
基準は登記の受付日や相続日ではなく、登記記録にある売買契約の日です。例えば契約日が2017年10月1日なら、69条の2の単独申請を検討できるのは2027年10月1日以後です。日付の読み違いを防ぐため、最新の登記事項証明書で原因欄を確認します。
買戻期間が短くても69条の2は10年経過が必要
民法580条では買戻期間を10年以下とし、期間を定めなかったときは5年以内としています。しかし、登記上の買戻期間が5年などで既に満了していても、69条の2による無条件の単独抹消は「契約の日から10年経過」が要件です。
10年未満でも、買戻権者と合意して共同申請する方法があります。また、登記された買戻期間が満了し、法務省令所定の調査をしても共同申請すべき者の所在が判明しない場合は、不動産登記法70条2項・3項の公示催告と除権決定を用いる別制度を検討できます。単に期間が満了しただけで、所有者が当然に単独抹消できるわけではありません。
相続登記との順番
69条の2で単独申請するのは、登記上の所有者など、抹消によって利益を受ける登記権利者です。名義人が故人のままなら、通常は相続登記で現在の権利者を登記してから買戻特約を抹消します。
相続登記は原則として、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内です。施行前から取得を知っていた未登記不動産は最短2027年3月31日が期限です。買戻特約の10年経過を待つことは、相続登記期限を延長する理由にはなりません。
最初に確認する資料
- 最新の登記事項証明書(全部事項)
- 買戻特約が付された売買契約書・分譲契約書
- 自治体・公社等との解除書類や過去の通知
- 固定資産税資料、権利証、登記識別情報通知
- 相続登記の完了後なら現在名義人の登記識別情報通知
登記事項証明書では、対象となる所有権・地上権等、買戻特約の順位番号、契約日、期間、買戻代金、契約費用、買戻権者、対象不動産を確認します。複数筆や共有持分があれば、どの権利に特約が付いているかを一筆ずつ照合します。
必要書類・69条の2による申請情報と添付情報
典型的な本人申請では、買戻特約抹消登記申請書、対象不動産の表示、申請人の表示、登録免許税を準備します。司法書士へ委任するときは代理権限証明情報が必要です。相続登記や住所・氏名変更が未了なら、それぞれの前提登記の申請書・添付情報も別途必要です。
69条の2による単独申請では、解除証書・期間満了証明などの登記原因証明情報や、旧買戻権者の登記識別情報・委任状を前提としません。ただし、10年未満の共同申請、判決、除権決定など別ルートでは必要資料が変わります。
登録免許税とその他の費用
登録免許税法別表第一により、登記の抹消は原則として不動産1個につき1,000円です。同一申請書で20個を超える不動産の抹消を受ける場合は1件2万円です。土地2筆なら通常2,000円で、建物や敷地権が対象に含まれると個数の数え方が変わります。
このほか、登記事項証明書、戸籍・住所証明、郵送、相続登記や住所変更登記の登録免許税、司法書士報酬等がかかります。売買決済が迫る場合は、抹消だけでなく前提登記を含めて見積りと日程を確認します。
申請方法と完了確認
対象不動産所在地を管轄する法務局へ、窓口、郵送またはオンラインで申請します。本人申請も可能ですが、法務局の登記手続案内は申請書作成支援であり、権利関係の判断や契約上の紛争解決を代行するものではありません。
完了後は新しい登記事項証明書を取得し、該当する買戻特約に下線が引かれ、抹消登記が記録されているか確認します。複数筆・共有持分・所有権以外の権利があるときは、一部だけ残っていないかも確認します。
所有者の住所・氏名が変わっている場合
申請人の現在の住所・氏名と登記記録が一致しない場合は、原則として先に住所・氏名変更登記を行います。2026年4月1日から住所等変更登記も原則2年以内の申請が義務化されています。相続登記後に転居・改姓している場合も確認します。
野田市・柏市・流山市・松戸市の管轄・問い合わせ先
申請先は相続人や買戻権者の住所ではなく、対象不動産の所在地を管轄する法務局です。複数管轄に不動産があれば、原則として管轄ごとに申請します。
野田市・柏市は柏支局、流山市・松戸市は松戸支局です。登記手続案内は予約制の場合があるため、来庁前に公式案内を確認してください。管轄・電話番号の確認日:2026-09-10。
自分でできるか
契約日から10年経過が明らかで、相続登記・住所変更登記が済み、対象不動産が少ないケースは本人申請も可能です。登記記録例、申請書様式、管轄法務局の案内を確認し、不備があれば自分で補正します。
司法書士に相談した方がよいケース
- 契約日から10年を経過していない
- 登記された期間は満了したが買戻権者の所在が分からない
- 買戻しを行使した、または紛争・通知の資料がある
- 相続登記、住所・氏名変更登記が未了
- 数次相続、共有、複数筆、複数管轄が関係する
- 所有権以外の権利に買戻特約が付いている
- 売却・融資の決済日が決まっている
注意点
- 10年の起算点:相続日や登記受付日ではなく売買契約日を確認します。
- 期間満了との違い:短い期間が満了しても、69条の2は契約日から10年が必要です。
- 甲区だけとは限らない:対象権利によって記録場所が変わります。
- 相続登記期限は別:買戻特約抹消を待っても3年期限は延びません。
- 完了後に再確認:全ての不動産・持分・対象権利から抹消されたか確認します。
よくある質問
買戻権者の同意がなくても抹消できますか
契約日から10年を経過していれば、不動産登記法69条の2により登記権利者が単独申請できます。この制度自体には買戻権者の所在不明証明も不要です。
買戻期間が5年なら5年後に単独申請できますか
69条の2による単独申請は契約日から10年経過が要件です。10年未満は共同申請、または期間満了と所在不明等の要件を満たす別制度を検討します。
故人名義のまま相続人が単独申請できますか
通常は相続登記で現在の登記権利者を登記してから抹消します。数次相続や売却予定がある場合は申請順序を司法書士へ確認します。
買戻権者が所在不明であることの証明は必要ですか
契約日から10年経過後の69条の2による抹消には不要です。10年未満で不動産登記法70条の制度を利用する場合は、所定の所在調査や公示催告・除権決定が問題になります。
登録免許税はいくらですか
原則として対象不動産1個につき1,000円です。同一申請で20個を超える場合は1件2万円です。土地・建物・敷地権等の個数を登記記録で確認します。
買戻特約は抵当権と同じですか
違います。買戻特約は売主の買戻権に関する登記で、抵当権は債権を担保する権利です。登記の目的、原因、申請関係者も異なります。
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- No.3 相続財産を調査する
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参考にした公式情報
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「不動産登記法」
- e-Gov法令検索「不動産登記令」
- e-Gov法令検索「登録免許税法」
- 法務省「買戻特約抹消等に関する改正通達」
- 法務省「買戻権に関する登記の記録例」
- 法務局「所有者不明土地関連・登記抹消手続の簡略化」
- 法務局「不動産登記の申請書様式」
- 千葉地方法務局「不動産登記管轄区域一覧」
情報確認日:2026年9月10日
契約日、対象権利、前提登記、10年未満の抹消方法、登録免許税の個数は個別の登記記録で変わります。申請前に管轄法務局または司法書士へ最新要件を確認してください。