相続・遺産分割・包括遺贈などで農地の権利を取得した人は、農地法第3条の3により、その農地がある市町村の農業委員会へ届け出ます。法律上は権利取得を知った後「遅滞なく」、実務上の目安はおおむね10か月以内です。農業委員会への届出と法務局への相続登記は両方必要です。
農地相続届出の基本情報
- 項目
- 内容
- 対象
- 相続・遺産分割・包括遺贈等で農地や採草放牧地の権利を取得した人
- 法定の時期
- 権利を取得したことを知った後、遅滞なく
- 実務上の目安
- 農林水産省の周知は相続発生からおおむね10か月以内
- 提出先
- 相続人の住所ではなく、農地が所在する市町村の農業委員会
- 届出と登記
- 農業委員会への届出と法務局への相続登記は別々に必要
- 無届・虚偽
- 農地法69条により10万円以下の過料となる可能性
遺産分割前後で2回の届出が必要になる場合がある
相続人が複数いる場合、相続開始時の共有による取得と、遺産分割で特定の人が取得した時点が、それぞれ届出対象になる場合があります。農林水産省の事務処理基準は、双方の取得後に遅滞なく届け出ること、連名届出も可能であることを示しています。
ただし、最初の届出時点ですでに遺産分割が済んでいる場合、共有取得の届出を省略できるとされています。実際の届出人と記載方法は、農地所在地の農業委員会へ確認してください。
農地相続の届出を行う5STEP
- 1
名寄帳・固定資産税課税明細書・登記事項証明書等から田畑の所在、地番、地目、面積を整理する
- 2
農地ごとに所在地の農業委員会を特定し、遺産分割前後の届出方法と期限を確認する
- 3
各農業委員会の最新の届出書を入手し、取得日、取得事由、権利の種類、農地情報を記入する
- 4
自治体が指定する登記事項証明書、課税明細書、本人確認・国籍確認資料、委任状等を準備して提出する
- 5
受理後、相続登記、管理、貸付け・売却・転用、土地改良区や相続税の手続きを別に確認する
誰が届出の対象になるか
農地法3条の3は、農地法3条の許可を受けずに農地または採草放牧地の権利を取得した人に届出を求めています。相続、遺産分割、包括遺贈、時効取得、法人の合併・分割等が代表例です。農業を続ける予定がない人や遠方に住む人も、権利を取得すれば対象です。
相続人全員が法定相続分で共有取得した段階と、その後の遺産分割で取得者が変わる段階は、それぞれ届出対象となる場合があります。農林水産省の事務処理基準では連名届出も可能で、最初の届出時に遺産分割済みなら共有取得の届出を省略できるとされています。
期限|法律は「遅滞なく」、目安は10か月
農地法上の表現は、権利を取得したことを知った後「遅滞なく」です。農林水産省の周知資料は、相続発生日からおおむね10か月以内を目安として案内しています。柏市・流山市は、権利取得を知った日から10か月以内と案内しています。
10か月は法律の条文に固定された全国一律の締切日ではありません。遺産分割が長引く場合も放置せず、相続開始時の共有取得として誰が届けるかを農業委員会へ確認します。期限を過ぎた場合も、取得日と事情を説明して速やかに相談してください。
手続き先
提出先は相続人の住所地ではなく、農地が所在する市町村の農業委員会です。野田・柏・流山・松戸など複数の市に農地がある場合は、市ごとに届出します。同じ市内に複数筆ある場合の一覧表や連記方法は各委員会の様式に従います。
必要書類は市ごとに違う
全国共通の中心書類は、農地法第3条の3第1項の規定による届出書です。ただし、添付・提示書類は農業委員会ごとに異なります。
- 野田市:届出書。複数筆なら固定資産税課税明細書の写しまたは農地一覧表。確認用に登記簿謄本を持参し、代理提出は委任状
- 柏市:届出書1部。筆数が多い場合は筆別明細書を利用
- 流山市:届出書1部。代理申請時は委任状。公式案内ではその他添付書類は不要
- 松戸市:届出書1部、取得を確認できる土地の登記事項証明書等。国籍確認のため住民票の写し、在留カード等の提示を案内
野田市は相続登記後の提出を案内しています。一方、法律上は権利取得を知った後遅滞なくが基準です。登記に時間がかかり10か月の目安を超えそうなときは、待ち続けず野田市農業委員会へ相談します。
費用
東葛4市の公式案内に、農地法3条の3届出の行政手数料は示されていません。費用の有無は提出先へ確認してください。登記事項証明書・戸籍等の取得費、郵送費、相続登記の登録免許税、専門家報酬、土地改良区の賦課金等は別です。
相続登記との違い
農林水産省「農地相続ポータル」は、農業委員会への届出と法務局への相続登記がそれぞれ必要だと案内しています。農業委員会の受理通知書は、権利関係を証明したり、所有権移転の効力を生じさせたりするものではありません。
相続登記は、相続で不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内が基本です。遺産分割が成立した場合には、その成立日から3年以内に分割内容を反映した登記も必要です。農地法の届出をしても登記義務は完了しません。
相続開始と遺産分割で2回必要になる例
父の死亡時に子3人が農地を法定相続分で共有取得し、その後の遺産分割で長男が単独取得する場合、共有取得と単独取得がそれぞれ届出対象になり得ます。最初の届出前に分割が成立していれば、共有取得の届出を省略できる扱いがあります。届出済みか不明なときは、受理通知書や農業委員会の記録を確認します。
相続放棄をした場合
家庭裁判所で相続放棄が受理され、初めから相続人でなかったものと扱われる人は、通常、その農地の権利取得者として届け出ません。ただし、他の相続人や次順位相続人が取得することがあるため、誰が届出人になるかを農業委員会へ説明し、相続放棄申述受理通知書等の提示が必要か確認します。
売却・貸付け・転用は別の許可等が必要
相続そのものには通常、農地法3条の許可は不要ですが、相続後に農地を第三者へ売る・貸す場合は原則として農業委員会の許可等が必要です。住宅、駐車場、資材置場など農地以外へ転用する場合も、区域に応じて許可または届出が必要です。相続届出の受理だけで自由に処分できるようになるわけではありません。
農業をしない場合の管理
耕作しない場合も、雑草、害虫、土砂流出、水路、近隣農地への影響を放置しないよう管理します。農林水産省は、農地バンクへの貸付けを選択肢として案内しています。貸付先が見つからない場合もあるため、早めに農業委員会や農地利用最適化推進委員へ相談します。
自分でできるか
農地の所在・地番・取得者が明確で、自治体の様式と添付書類を確認できれば、自分で届け出られます。筆数が多い、登記地目と現況が異なる、共有・賃借権・納税猶予・土地改良区の負担がある場合は、資料を一覧にして農業委員会へ事前相談します。
専門家・窓口へ相談した方がよいケース
- 遺産分割前で、共有取得の届出を誰が行うか分からない
- すでに10か月を過ぎている、または相続登記が終わらない
- 登記簿・課税明細・現況で地目や面積が一致しない
- 農地に賃借権、抵当権、土地改良区賦課金、相続税納税猶予がある
- 売却・貸付け・転用・国庫帰属を検討している
農地法と利用相談は農業委員会、相続登記は法務局・司法書士、相続税の納税猶予は税務署・税理士へ相談します。
注意点
- 届出と登記は別:両方を期限内に進めます。
- 遺産分割前も確認:共有取得の届出が必要になる場合があります。
- 市ごとに書類が違う:別の自治体の様式・添付書類を流用しません。
- 受理通知書の限界:所有権や相続関係を証明する書類ではありません。
- 無届・虚偽:農地法69条により10万円以下の過料となる可能性があります。
よくある質問
農業をしない相続人も届出が必要ですか
権利を取得すれば必要です。農業をする予定の有無ではなく、相続等により農地の権利を取得したかで判断します。
相続登記を済ませれば届出は不要ですか
不要にはなりません。法務局への相続登記と、農業委員会への農地法3条の3届出は別の義務です。
遺産分割が終わるまで待ってよいですか
待たずに農業委員会へ確認してください。相続開始時の共有取得と、遺産分割後の取得がそれぞれ届出対象になる場合があります。
10か月を過ぎたら受け付けてもらえませんか
放置せず、すぐ農業委員会へ相談します。取得時期と遅れた事情を伝え、提出方法の指示を受けてください。
農地を相続したら自由に売却できますか
原則として別の許可等が必要です。売買・貸付け・転用の計画を立てる前に、農地所在地の農業委員会へ相談します。
関連する相続手続き
野田市・柏市・流山市・松戸市の農業委員会
農地の所在地ごとに、その市の農業委員会へ提出します。4市で必要書類が異なるため、必ず該当市の最新様式を使用してください。
窓口・電話番号・様式の確認日:2026-08-26。農地が複数市にある場合は、それぞれの農業委員会へ提出してください。
参考にした公式情報
- e-Gov法令検索「農地法」
- 農林水産省「農地相続ポータル」
- 農林水産省「農家の皆さま・農地を相続した方へ」
- 農林水産省「農地法関係事務に係る処理基準」
- 野田市「農地法第3条の3第1項の規定による届出書」
- 柏市「農地に関する手続き(相続)」
- 流山市「農地を相続等で取得した場合の届出」
- 松戸市「農地の相続等の届出制度」
情報確認日:2026年9月12日
この記事は農地相続の一般的な届出を説明しています。対象農地、届出人、必要書類、受付方法は個別事情と農業委員会により異なります。提出前に農地所在地の農業委員会の最新案内を確認してください。