相続手続き100チェックリスト No.79。相続した建物が法務局で未登記なら、所有権取得の日から原則1か月以内に建物表題登記を申請します。固定資産税の課税台帳、市役所の名義変更、法務局の表題登記、所有権保存登記は別の手続です。
No.79 未登記建物の表題登記で確認すること
- 確認項目
- 要点
- 登記の有無
- 課税明細だけで判断せず、法務局の登記記録を確認
- 期限
- 所有権取得の日から原則1か月以内
- 専門家
- 表題登記は土地家屋調査士、保存登記は司法書士
- 図面
- 建物図面と各階平面図を現地調査・測量から作成
- 市役所届出
- 固定資産税の名義変更であり、法務局登記とは別
固定資産税を払っていても、法務局で登記済みとは限らない
課税明細・名寄帳と法務局の登記記録を別々に確認してください。市役所の未登記家屋名義変更だけでは建物表題登記は完了しません。
不動産登記法47条の期限は所有権取得の日から原則1か月です。相続登記の3年と混同せず、すでに経過していても早急に手続きを始めます。
相続した未登記建物を表題登記する10STEP
- 1
固定資産税の課税明細、名寄帳、建築書類を集める
- 2
法務局で建物の登記記録と家屋番号の有無を確認する
- 3
土地の地番、建物の位置、増築・附属建物を現地と照合する
- 4
戸籍、遺言、遺産分割協議書等で取得者と持分を確定する
- 5
土地家屋調査士へ資料を提示し、調査・見積りを依頼する
- 6
建物の種類・構造・床面積を現地調査・測量する
- 7
所有権証明資料、建物図面、各階平面図を整える
- 8
建物所在地を管轄する法務局へ表題登記を申請する
- 9
登記官の実地調査や補正連絡に対応する
- 10
完了後、所有権保存登記と市の課税台帳手続を確認する
誰が必要か
相続した建物について法務局の登記記録が存在しない方が対象です。古い自宅、物置、離れ、倉庫、貸家などが固定資産税の課税明細には載っていても、法務局では未登記ということがあります。建物を取得する相続人が、現況と相続関係を整理して建物表題登記を申請します。
最初に「本当に未登記か」を調べる
納税通知書に記載があるだけで登記済みとは判断できません。市区町村の固定資産課税台帳と法務局の登記記録は別制度です。土地の登記事項証明書、固定資産税の課税明細・名寄帳、建築確認書類を照合し、建物所在地を管轄する法務局で建物の登記記録と家屋番号を確認します。
住所表示と土地の地番は一致しないことがあります。建物の所在地番、家屋番号、種類、構造、床面積、附属建物の有無を現地と資料で照合してください。登記はあるが増築部分だけ未反映なら、建物表題登記ではなく建物表題部変更登記を検討します。
期限は所有権取得の日から原則1か月
不動産登記法47条1項は、新築建物または区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者に、所有権取得の日から1か月以内の表題登記申請を義務付けています。正当な理由なく申請を怠った場合は、同法164条により10万円以下の過料の対象となり得ます。
「相続登記は3年以内」という一般的な説明を、そのまま未登記建物の表題登記へ当てはめないでください。相続による所有権取得日の判断は、死亡日、遺言、遺産分割の内容や経緯により確認が必要です。すでに1か月を過ぎていても放置せず、管轄法務局または土地家屋調査士へ直ちに相談します。
建物表題登記・所有権保存登記・市役所届出の違い
- 建物表題登記:所在、家屋番号、種類、構造、床面積、表題部所有者などを初めて登記記録に載せる表示に関する登記
- 所有権保存登記:表題登記後、権利部に初めて所有権を登記する権利に関する登記
- 市役所の未登記家屋名義変更:固定資産税の家屋補充課税台帳の名義を変更する税務上の届出
法務省の「不動産登記のABC」は、建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積等を表題部、所有者に関する事項を権利部に記録すると説明しています。市役所の届出をしても、法務局の表題登記や所有権保存登記が完了するわけではありません。
建物表題登記は土地家屋調査士、所有権保存登記は司法書士
法務局は、建物表題登記など表示に関する登記の代理専門家を土地家屋調査士、所有権移転や抵当権設定など権利に関する登記の代理専門家を司法書士と案内しています。土地家屋調査士は資料調査、現地調査・測量、建物図面・各階平面図の作成、表題登記申請を行います。
表題登記だけでは通常、権利部の所有権登記は作成されません。相続後の売却、担保設定、融資などを予定している場合は、表題登記後の所有権保存登記までの工程を土地家屋調査士と司法書士へ連携して確認してください。
表題登記に記録する主な内容
建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積、主たる建物・附属建物の区別、表題部所有者等を申請します。不動産登記規則82条・83条は、建物図面を原則500分の1、各階平面図を原則250分の1の縮尺で作成し、位置・形状・床面積・求積方法等を記録するものとしています。
固定資産税の床面積、建築確認の床面積、登記上の床面積は、算定方法や現況により一致しない場合があります。課税明細の数字をそのまま申請書へ転記せず、現地調査と法令上の床面積算定を行います。
必要書類
- 建物表題登記申請情報・申請書
- 建物図面・各階平面図
- 建築確認済証、検査済証、工事完了引渡証明書、工事請負契約書、領収書等の所有権証明資料
- 固定資産評価証明書、課税明細書、名寄帳等
- 故人の死亡と相続人を確認する戸籍・除籍・改製原戸籍、法定相続情報一覧図等
- 遺言書、遺産分割協議書、印鑑証明書など取得者を示す相続書類
- 申請人の住所証明情報
- 土地の登記事項証明書、公図、地積測量図、既存の建物図面等
- 代理申請の場合の委任状・土地家屋調査士作成の調査報告情報
不動産登記令では建物表題登記の添付情報として建物図面、各階平面図、所有権を証する情報等が定められています。古い建物で建築確認書類や施工会社の証明が得られない場合は、どの資料の組合せで所有権を証明できるかを管轄法務局・土地家屋調査士へ個別に確認してください。
建築書類が見つからない古い建物
未登記期間が長いほど、建築確認資料、施工会社、領収書、当時の所有関係が分かりにくくなります。固定資産税資料だけで必ず登記できるとは限りません。建築当時の契約書・領収書、電気・水道の開始資料、航空写真、相続書類、敷地所有者の資料など、建物の建築・所有経緯を示すものを捨てずに集めます。
故人以外が建築費を負担した、借地上に建物がある、共有で建築した、増改築を重ねた、附属建物が多数あるケースは、表題部所有者や建物範囲の判断が難しくなります。
手続き方法
相続人・対象建物・土地を特定し、法務局と市役所の資料を取得します。土地家屋調査士が現地で建物の位置、種類、構造、床面積、附属建物を調査し、建物図面・各階平面図を作成します。所有権証明資料と相続書類を整えて建物所在地を管轄する法務局へ申請し、必要に応じて登記官の実地調査や補正へ対応します。
登記・供託オンライン申請システムには建物表題登記の申請情報作成例があります。ただし、相続関係書類や古い建物の所有権証明を含む案件は、画面入力だけで完結するとは限りません。
費用
費用の中心は、土地家屋調査士の資料調査、現地調査・測量、図面作成、申請代理の報酬と、証明書・交通・通信等の実費です。日本土地家屋調査士会連合会の令和4年度報酬調査では、一定条件の一般的な新築住宅の建物表題登記について、全国平均85,174円・中央値82,500円(消費税別)の例が示されています。
これは未登記の相続建物の定額料金ではありません。古い建物、資料不足、遠方、増改築、複数棟、借地、共有などでは作業量が増えます。表題登記後の所有権保存登記に必要な登録免許税・司法書士報酬は別に見積もります。
野田市・柏市・流山市・松戸市の管轄・問い合わせ先
建物表題登記は建物所在地を管轄する法務局へ申請します。野田市・柏市は柏支局、流山市・松戸市は松戸支局です。市役所の未登記家屋名義変更は固定資産税の課税台帳に関する別手続で、法務局の登記の代わりにはなりません。
野田市
登記管轄:千葉地方法務局 柏支局
〒277-0005 柏市柏6丁目10番25号
未登記家屋の課税台帳:野田市役所 課税課家屋係
柏市
登記管轄:千葉地方法務局 柏支局
〒277-0005 柏市柏6丁目10番25号
未登記家屋の課税台帳:柏市役所 資産税課
流山市
登記管轄:千葉地方法務局 松戸支局
〒271-8518 松戸市岩瀬473番地18
未登記家屋の課税台帳:流山市役所 資産税課
松戸市
登記管轄:千葉地方法務局 松戸支局
〒271-8518 松戸市岩瀬473番地18
未登記家屋の課税台帳:松戸市役所 固定資産税課
法務局の電話は自動音声案内に従い、土地・建物の登記申請手続を選択してください。個別案件の書類作成・測量・代理申請は土地家屋調査士へ相談します。管轄・電話番号の確認日:2026-09-09。
固定資産税の名義変更も別途確認する
法務局で登記するまでの間、市役所の家屋補充課税台帳が故人名義のまま残ることがあります。野田市、柏市、流山市、松戸市はいずれも未登記家屋の所有者変更について資産税担当課への連絡・届出を案内しています。法務局へ表題登記を申請する予定でも、課税台帳への反映時期と市への届出要否を各市へ確認してください。
野田市は、土地や登記家屋の相続登記が完了しても未登記家屋の登録名義は自動では変わらないと明記しています。松戸市も、未登記家屋の所有者変更届を法務局の登記とは別に案内しています。
自分でできるか
本人申請は可能ですが、建物の認定、現地測量、床面積算定、図面作成、古い所有権証明資料の評価が必要です。単純な書類記入だけではないため、相続した古い未登記建物は土地家屋調査士への依頼が現実的です。法務局の登記手続案内は一般的な様式・添付書類の説明であり、個別の法律判断や申請書類の事前審査ではありません。
専門家に相談した方がよいケース
- 建築確認済証、検査済証、工事完了引渡証明書等がない
- 故人以外が建築費を負担した、共有で建築した、借地上の建物である
- 課税明細と現況の種類・構造・床面積が一致しない
- 増築、附属建物、複数棟、区分建物がある
- 相続人・取得者・持分が確定していない
- 売却、融資、担保設定、解体を急いでいる
- 表題登記後の所有権保存登記まで一括して進めたい
注意点
- 固定資産税の通知だけで登記済みと判断しない:法務局の登記記録を確認します。
- 1か月の期限を3年と混同しない:未登記建物の表題登記は所有権取得日から原則1か月です。
- 表題登記と保存登記を分ける:物理的状況の登記と権利の登記は別工程です。
- 市役所届出で登記は完了しない:家屋補充課税台帳の名義変更は税務上の手続です。
- 現況を正確に測る:増築や附属建物を見落とさないようにします。
- 古い資料を捨てない:所有権証明に使える可能性があります。
よくある質問
固定資産税を払っていれば登記済みですか
いいえ。未登記家屋でも家屋補充課税台帳に登録され、固定資産税が課されることがあります。法務局の登記記録を別に確認してください。
市役所で未登記家屋の名義を変えれば十分ですか
十分ではありません。市役所の手続は固定資産税の課税台帳に関する届出で、法務局の建物表題登記の代わりにはなりません。
1か月を過ぎています。もう申請できませんか
申請できます。放置せず、取得日の整理と必要資料の収集を始め、管轄法務局または土地家屋調査士へ早急に相談してください。
表題登記が終われば相続人名義の権利証が出ますか
表題登記と権利部の所有権保存登記は別です。売却や担保設定を予定する場合は、司法書士に所有権保存登記まで確認してください。
古くて建築確認書類がありません
固定資産税資料、工事契約・領収書、施工会社の証明、相続書類などを集めます。代替できる資料は案件ごとに異なるため、土地家屋調査士と管轄法務局へ確認します。
増築部分だけ登記されていません
建物全体が未登記とは限りません。既存の登記記録があり、増築部分のみ現況と違う場合は、建物表題部変更登記を検討します。
関連する相続手続き
参考にした公式情報
- e-Gov法令検索「不動産登記法」
- e-Gov法令検索「不動産登記令」
- e-Gov法令検索「不動産登記規則」
- 法務省「不動産登記のABC」
- 法務局「登記の申請を御検討されている皆さまへ」
- 登記・供託オンライン申請システム「申請情報作成例・建物の表題登記編」
- 日本土地家屋調査士会連合会「不動産登記について」
- 日本土地家屋調査士会連合会「業務報酬統計資料」
- 千葉地方法務局「不動産登記管轄区域一覧」
- 千葉地方法務局「柏支局」
- 千葉地方法務局「松戸支局」
- 野田市「未登記家屋の所有者変更について」
- 柏市「未登記家屋の名義人変更」
- 流山市「新築住宅の減額措置・未登記家屋の所有者変更」
- 松戸市「未登記家屋の所有者変更について」
情報確認日:2026年9月9日
建物の認定、所有権取得日、申請人、表題部所有者、必要書類、登録する種類・構造・床面積は、建物の現況・建築経緯・相続内容により異なります。申請前に管轄法務局と土地家屋調査士の最新案内を確認してください。