暮らし・契約の整理

賃貸オーナー死亡後の手続き|家賃・敷金・貸主変更と相続登記

期限
借主等へ速やかに通知。準確定申告4か月・相続登記3年
手続き先
借主・管理会社、物件所在地の法務局・市、所轄税務署

賃貸オーナーが亡くなっても既存の入居契約は当然には終了せず、相続人は家賃を受け取る権利だけでなく敷金返還・修繕等の義務も承継します。借主・管理会社へ統一窓口を知らせ、未分割期間の家賃を記録します。準確定申告は4か月、相続登記は原則3年で、未分割中の不動産所得は各相続人が法定相続分で申告します。

賃貸オーナー死亡後の期限と対応

確認項目
主な対応
入居契約
死亡だけでは当然終了しない。権利義務を相続人が原則承継
借主通知
一律期限なし。統一窓口と家賃・修繕連絡先を速やかに通知
未分割家賃
管理口座にかかわらず各相続人が法定相続分で所得申告
準確定申告
故人の死亡日までの所得を、相続開始を知った翌日から4か月以内
相続登記
物件取得を知った日から原則3年。物件所在地の法務局へ
敷金・修繕
預り額、返還義務、設備修繕、未収・未払金を台帳で承継
管理契約
管理委託とサブリースを区別し、契約先へ承継資料を提出

集金する人と所得を申告する人は同じとは限らない

遺産分割前に一人の口座で家賃を管理しても、その人だけの所得になるわけではありません。国税庁は、未分割の相続財産から生じる所得を、各共同相続人が法定相続分に応じて申告すると案内しています。

後日の遺産分割は未分割期間の所得帰属を遡って変えないため、死亡日以後の家賃・経費を月ごとに分けて記録します。

賃貸物件を承継する8STEP

1

登記簿、賃貸借・管理・サブリース契約、家賃・敷金台帳を集める

2

物件、借主、家賃、敷金、未収金、修繕、保険、ローンを一覧化する

3

相続人を確認し、遺産分割までの管理窓口と記録方法を合意する

4

管理会社・サブリース会社・保証会社へ死亡を通知する

5

借主へ統一連絡先と家賃・修繕の取扱いを根拠資料付きで通知する

6

死亡前後の家賃を区分し、準確定申告と相続人側の申告を準備する

7

遺産分割で物件取得者を決め、管轄法務局へ相続登記する

8

管理契約、固定資産税、敷金台帳、保険、ローン、青色申告を更新する

賃貸オーナーが亡くなったとき最初に行うこと

故人がアパート、マンション、戸建て、店舗、駐車場、貸地などを貸していた場合は、登記簿、賃貸借契約書、管理委託・サブリース契約、入居者台帳、家賃・敷金台帳を集めます。物件の所有者、契約上の貸主、家賃の受取人が同じとは限らないため、物件・契約ごとに確認してください。

民法896条により、相続人は故人の財産上の権利義務を原則として相続開始時から承継します。貸主の死亡だけで既存の賃貸借契約が当然に終了したり、借主へ退去を求められたりするわけではありません。

誰が手続きをするか

遺言、家族信託、法人所有などの特別な事情がなければ、まず相続人が共同で物件と契約を管理します。遺産分割前に一人を連絡・集金窓口にする場合は、その権限、入金口座、経費支払、帳簿共有、分配方法を相続人間で書面化します。

遺産分割で物件を取得する人が決まったら、その人が相続登記を行い、管理会社・借主等へ確定した貸主と連絡先を通知します。

期限

  • 借主・管理会社への通知:全国一律の「死亡から何日以内」という法定期限はありませんが、家賃、修繕、事故対応のため速やかに行います。
  • 相続登記:不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内です。
  • 準確定申告:相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。
  • 青色申告承認申請:故人の事業を承継する場合は死亡時期によって期限が異なります。

法務省によると、2024年4月1日より前の相続で未登記の不動産も対象で、原則2027年3月31日までに申請が必要です。

手続き先

  • 各借主、テナント、借地人
  • 管理会社、仲介会社、サブリース会社、保証会社
  • 物件所在地を管轄する法務局
  • 固定資産所在地の市区町村
  • 故人の準確定申告を扱う税務署、承継者の納税地を扱う税務署
  • 火災保険・施設賠償責任保険、ローンの金融機関

必要書類・資料

  • 登記事項証明書、公図、固定資産税課税明細
  • 賃貸借契約書、更新書類、入居者・保証・敷金台帳
  • 管理委託契約書、サブリース契約書、送金明細
  • 修繕履歴、未収家賃、未払費用、預り金の資料
  • 故人の死亡と相続関係が分かる戸籍・法定相続情報
  • 遺言書、遺産分割協議書等
  • 相続人間の管理合意書、通知文、問い合わせ先
  • 相続登記完了後の登記事項証明書

提出書類は相手方ごとに異なります。戸籍一式を借主全員へ配るのではなく、管理会社や専門家と相談し、必要な範囲の根拠資料と統一した問い合わせ先を示します。

借主への貸主変更通知

通知には、故人の氏名、死亡の事実、新しい連絡窓口、修繕・緊急連絡先、家賃の取扱い、問い合わせ先を記載します。振込口座を変更する場合は、詐欺と誤解されないよう、管理会社との連名、既知の電話番号からの事前連絡、登記・相続関係を確認できる資料などを組み合わせます。

遺産分割前に複数の相続人が異なる振込先を案内してはいけません。権限に争いがある場合は口座変更を急がず、借主・管理会社・弁護士へ相談します。

相続登記と家賃請求

民法605条の2は、対抗要件を備えた不動産賃貸借で所有権が移転した場合の賃貸人の地位と、所有権移転登記による借主への対抗について定めています。相続では民法896条の包括承継も前提になりますが、確定した物件取得者が自らを貸主として借主へ主張し、家賃を請求する場面では相続登記を整えることが重要です。

登記前の一時的な管理方法は、相続人の範囲、遺言、遺産分割、借主との関係で異なります。「代表者を決めたから物件を単独取得した」とはならないため、管理と所有権の確定を区別します。

遺産分割前の家賃収入

国税庁の未分割遺産の不動産所得Q&Aによると、遺産分割が確定するまでの賃貸収益は、特定の相続人の口座で全額管理していても、各共同相続人に法定相続分に応じて帰属し、それぞれが申告します。

後日、物件を一人が取得する遺産分割が成立しても、未分割期間の所得帰属は遡って変わらず、それを理由に更正の請求や修正申告はできないと国税庁は案内しています。入金口座と税務上の所得帰属を混同せず、月ごとの家賃・経費・分配記録を残してください。

死亡前後の所得税を区分する

国税庁によると、故人の1月1日から死亡日までに確定した所得は準確定申告の対象で、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に申告・納税します。死亡後の家賃収入は故人の準確定申告へ含めず、相続人側の不動産所得として整理します。

家賃は原則として契約上の支払日を基準に収入計上します。国税庁の収入計上時期を確認し、未収家賃、前受家賃、返還不要となる敷金等を税理士と区分します。

青色申告は相続人へ自動承継されない

故人が青色申告だった場合も、その承認が相続人へ自動的に引き継がれるわけではありません。国税庁は、死亡日が1月1日~8月31日なら死亡日から4か月以内、9月1日~10月31日ならその年12月31日まで、11月1日~12月31日なら翌年2月15日までを、事業承継時の青色申告承認申請期限として案内しています。

誰が不動産貸付業を承継するか、未分割期間の各相続人が申請対象になるかは個別事情で変わるため、早めに税務署・税理士へ確認します。

敷金・修繕・預り金を引き継ぐ

相続するのは家賃を受け取る権利だけではありません。敷金返還、必要な修繕、設備維持、借主へ負う損害賠償などの義務も確認します。民法605条の2第4項は、不動産所有権の移転に伴い賃貸人の地位が移転する場合、敷金返還債務も新しい賃貸人へ承継されることを定めています。

敷金は受領時に当然の収入となるものではなく、原則は預り金です。契約ごとの預り額、控除済み額、原状回復、退去予定を台帳化し、現金だけを遺産分割して返還原資を失わないようにします。

管理委託とサブリースを区別する

  • 管理委託:貸主は所有者側で、管理会社が集金・修繕等を受託します。
  • サブリース:事業者が物件を借り、入居者へ転貸します。所有者に対する契約上の相手方はサブリース事業者です。

国土交通省の賃貸住宅管理業法FAQは、相続等で管理受託契約の相手方である賃貸人が変わった場合、同じ内容で承継するときも、管理業者が地位移転を認識後、遅滞なく新賃貸人へ契約内容の分かる書類を交付することが望ましいとしています。

「自動承継」「再契約必須」のどちらかに一律判断せず、解除条項、死亡・相続条項、送金保留、本人確認、借入連動条項を契約先へ確認します。

固定資産税・保険・ローン

相続登記が終わるまで、固定資産所在地の市へ相続人代表者・現所有者申告が必要になる場合があります。これは納税通知の窓口を決める手続きで、物件取得者や相続分を決めるものではありません。

火災保険・施設賠償責任保険は、被保険者、所有者、保険金受取人、保険料口座を確認します。ローンがある場合は、団体信用生命保険の対象、期限の利益、返済口座、抵当権を金融機関へ確認し、賃料だけで独断返済しないよう相続人間で記録します。

費用

借主への通知自体に法定手数料はありません。戸籍・登記事項証明書・評価証明書、相続登記の登録免許税、郵送、管理契約変更、司法書士・弁護士・税理士報酬などが個別に発生します。管理会社から変更費を求められた場合は、契約条項と作業内容を確認します。

自分でできるか

管理会社があり、相続人・物件・入居者・敷金が把握でき、遺産分割に争いがなければ、通知や資料整理は自分で進められます。ただし、未分割期間の家賃申告、相続登記、複数相続人の権限整理は誤りやすいため、早めに専門家の確認を受けると安全です。

専門家へ相談した方がよいケース

  • 相続人間で物件取得者、管理者、家賃分配が決まらない
  • 遺言、信託、共有、借地、サブリース、抵当権がある
  • 滞納、修繕、退去、敷金、事故、訴訟がある
  • 複数物件・多数入居者で帳簿や預り金が不明
  • 準確定申告4か月、青色申告、相続登記3年の期限が迫る

登記は司法書士、賃貸借・遺産分割紛争は弁護士、不動産所得・準確定申告は税理士へ相談します。

注意点

  • 家賃口座を独断で変えない:相続人間の権限と借主への根拠説明を整えます。
  • 死亡だけで契約条件を変更しない:既存契約と借主の権利を確認します。
  • 管理口座と所得帰属は別:未分割中は原則として各相続人が法定相続分で申告します。
  • 敷金・修繕義務を忘れない:収入だけでなく将来債務も台帳化します。
  • 登記と市の税届出を区別:現所有者申告だけでは相続登記になりません。
  • 管理とサブリースを区別:契約相手と通知先が変わります。

よくある質問

貸主が亡くなったら賃貸借契約を作り直しますか

死亡だけで新規契約が当然に必要になるわけではありません。貸主変更の確認書や通知を作ることはありますが、従来の賃料・敷金・更新条件を一方的に変更しないようにします。

遺産分割前の家賃を長男の口座で受け取れば、長男だけが申告しますか

いいえ。国税庁は、未分割の相続財産から生じる所得は、管理口座にかかわらず各共同相続人が法定相続分に応じて申告すると案内しています。

相続登記前でも家賃口座を変更できますか

一律には判断できません。借主が支払先を安全に確認できるよう、相続人間の管理権限、管理会社、相続関係資料を整えます。争いがある場合は変更前に弁護士へ相談してください。

敷金を遺産として相続人で分けてもよいですか

敷金には将来の返還義務があります。契約ごとの預り額と返還原資を確保し、物件・賃貸人の地位を取得する人との間で債務も含めて整理します。

故人が青色申告なら相続人もそのまま青色ですか

自動承継ではありません。死亡時期に応じた期限までに、相続人側の青色申告承認申請を検討します。

関連する相続手続き

野田市・柏市・流山市・松戸市の管轄・問い合わせ先

相続登記は亡くなった方の住所ではなく、賃貸物件の所在地を管轄する法務局へ申請します。野田市・柏市は柏支局、流山市・松戸市は松戸支局です。市の固定資産税届出は、各物件所在地の資産税担当へ確認します。

野田市

相続登記:千葉地方法務局 柏支局

固定資産税:野田市 課税課(土地・家屋)

柏市

相続登記:千葉地方法務局 柏支局

固定資産税:柏市 資産税課

流山市

相続登記:千葉地方法務局 松戸支局

固定資産税:流山市 資産税課

松戸市

相続登記:千葉地方法務局 松戸支局

固定資産税:松戸市 固定資産税課

家賃・契約・修繕の第一連絡先は各物件の管理会社・借主です。所得税は、準確定申告と相続人側の申告で所轄が異なる場合があるため、国税相談窓口へ確認してください。管轄・電話番号の確認日:2026-08-28。

参考にした公式情報

情報確認日:2026年8月28日

貸主の地位、未分割期間の家賃、敷金、管理・サブリース、登記・税務は、遺言・契約・遺産分割によって変わります。帳簿と契約書を確認し、期限がある手続きは専門家へ早めに相談してください。